こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
税務通信に3483号にM&A時にも注意が必要な記事が記載されていましたので紹介します。
なお、法人株主による子会社売却を想定しています。
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グループ法人税制
グループ法人税制は完全支配関係のある法人間の取引に強制適用される制度です。
M&Aでは株式を売買することが多く、グループ法人税制について検討する機会が沢山あります。グループ法人税制の適用の有無を判定するにあたり、完全支配関係を有することになった日がいつなのか?が重要です。
完全支配関係を有することになった日
株式の購入の場合、完全支配関係を有することとなった日は、株式の引渡日とされています。
(支配関係及び完全支配関係を有することとなった日の意義)
1-3の2-2 支配関係又は完全支配関係があるかどうかの判定における当該支配関係又は当該完全支配関係を有することとなった日とは、例えば、その有することとなった原因が次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げる日となることに留意する。(平22年課法2-1「四」により追加)
- (1) 株式の購入 当該株式の引渡しのあった日
- (2) 新たな法人の設立 当該法人の設立後最初の事業年度開始の日
- (3) 合併(新設合併を除く。) 合併の効力を生ずる日
- (4) 分割(新設分割を除く。) 分割の効力を生ずる日
- (5) 株式交換 株式交換の効力を生ずる日
(注) 上記(1)の株式を譲渡した法人における法第61条の2第1項《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡利益額又は譲渡損失額の計上は、原則として、当該株式の譲渡に係る契約の成立した日に行うことに留意する。
出典:法人税基本通達1-3の2-2
M&A時の注意点
中小企業M&Aは株式譲渡の形式をとることが多いです。
グループ法人税制の適用を検討する際の、完全支配関係を有することとなった日は、株式の引渡しのあった日で判定するのでした。
契約と決済を同日に行う場合
M&Aでは契約と決済を同日にするケースと、契約と決済を別日に行うケースがあります。
同日に行うのであれば、その日が完全支配関係を有することになった日に該当します。
契約と決済を別日に行う場合
契約と決済を別日に行うケースで、かつ、その契約と決済が決算期を跨ぐときに注意が必要です。
完全支配関係を有することとなった日と有価証券の譲渡損益の認識のタイミングが異なるためです。
完全支配関係を有することとなった日
完全支配関係を有することになった日は、株式の購入であれば当該株式の引渡しのあった日と法人税法基本通達1-3の2-1で規定されています。
有価証券の譲渡利益の計上をする日
有価証券の譲渡をする日は、法人税基本通達1-3の2-1注において、原則として、契約の成立した日に計上するとされています。
認識日が異なる
この2つ、それぞれ認識すべき日が違うことに気が付きましたか。
完全支配関係を有することになった日を判定する日は、株式の引渡日
譲渡損益を計上するのは契約の日です。
売手の会社にとっての影響
以下のように、契約事業年度に株式の売却損益を実現できるとタックスプランニングをしていると、売り手の会社に大きな影響が生じる可能性があります。
・契約をした事業年度に株式の売却損益を計上
・完全支配関係は継続中(株式の引渡は完了していないため)
売手の会社にとっては、売却損益を計上するものの、売却損益を実現することができません。グループ法人税制の規定により、売却損益は完全支配関係を有しないことになった日まで繰り延べです。
売却損益の実現するタイミングが異なってくるので税金計算に大きな影響を与える可能性があります。
【参考】有価証券の譲渡による損益の計上時期の特例
有価証券の譲渡損益の計上時期の特例があります。一定の要件を満たせば、契約の成立した日ではなく、引渡のあった日に有価証券の譲渡損益を計上することができるものです。
ただし、継続適用を条件としてと注書きがついているので、原則通り、契約の成立した日に処理することになるのでしょう…
(有価証券の譲渡による損益の計上時期の特例)
2-1-23 有価証券の譲渡損益の額は、原則として譲渡に係る契約の成立した日に計上しなければならないのであるが、令第119条の2第2項本文又は第3項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法》に規定する区分に応じ、法人が当該譲渡損益の額(事業年度終了の日において未引渡しとなっている有価証券に係る譲渡損益の額を除く。)をその有価証券の引渡しのあった日に計上している場合には、これを認める。(平12年課法2-7「二」により追加)
(注)
1 有価証券の取得についても、原則として取得に係る契約の成立した日に取得したものとしなければならないのであるが、その引渡しのあった日に取得したものとして経理処理をしている場合には、事業年度終了の日において未引渡しとなっている有価証券を除き、本文の譲渡の場合と同様に取り扱う。この場合、同条第1項の規定の適用についても同様とする。
2 本文及び(注)1の取扱いは、譲渡及び取得のいずれについてもこれらの取扱いを適用している場合に限り、継続適用を条件として認めるものとする。
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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
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