【中小企業M&A】株式損益の計上タイミング:クロージング条件に注意。

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

TAマスターNo794に株式譲渡損益の計上時期、前提条件に注意という記事が掲載されていましたので、M&Aにおける株式譲渡の収益計上タイミングについて確認してみます。

原則

株主が法人である場合と、個人である場合の原則的取扱いです。

法人:譲渡に係る契約の成立した日(法基通2-1-22)
個人:株式等の引渡のあった日(措通37-10-1)

法人は契約の成立した日ですが、個人の場合は引渡のあった日とされています。法人税と所得税で取り扱いが異なるという不思議が発生してます。

例外

次に法人税と所得税における例外の取扱いです。

法人:実行時点等通達に定める時期で収益認識(法基通2-1-22)
個人:契約の効力発生日(措通37-10-1)

実務上の取扱い:クロージング条件に注意

中小企業のM&Aにおいては、【クロージング条件】が課されているケースがあります。売主、買主双方で、株式譲渡の契約をするもののが、一定の条件(グロージング条件)を充足しない限りは、株式譲渡の効力が発生しない(株式譲渡は行われない)というものです。

クロージング条件の例

クロージング条件の例としては以下のようなものがあります。

・少数株主からの委任状の取得

・主要得意先の許可を得ること

・メインバンクの許可を得ること

・キーマン開示及びM&Aについての承諾

・許認可関係の取得

・公正取引委員会等からの許可

クロージング条件はこれ以外にも様々なパターンがありますが、頻出するものはこれらです。買手はクロージング条件が充足されない限りM&Aは実行できないよ、、、といったものになります。

このクロージング条件を充足するのに時間を要する場合があるため、株式譲渡の収益計上の時期に注意が必要になるというのが今回の記事のメインテーマです。

個人株主の場合

個人株主の場合は、引渡日が原則とされていますが、契約の効力発生日も例外として認められています。

M&Aの契約書にクロージング条件が付されている場合であっても、個人の場合は引渡日が原則で、例外が効力発生日であるため、実務上は引渡日=契約の効力発生日、と考えることができます。

個人株主の場合は原則的な取扱い=引渡日に株式譲渡が実行されたものとして確定申告を行えば特に問題はないと考えられます。

法人株主の場合

法人株主の場合は注意が必要です。

法人株主の場合は、契約の成立した日に株式譲渡損益を認識するのが原則だと法基通2-1-22に記載されていました。

ところが、M&Aにおいてクロージング条件が付されている場合はクロージング条件の充足状況次第ではM&A実行されないということも生じえます。

契約にクロージング条件が付されている場合、クロージング条件が満たされ、実際に株式譲渡が実行されたタイミングで株式譲渡損益を認識することになると考えられます(原則とは異なる取り扱い)。

まとめ

株式譲渡による収益認識のタイミングはなぜか法人株主と個人株主で異なります。

また、法人株主の場合でM&Aのような少し特殊な条件の付された契約の場合は収益認識タイミングが異なる点に留意が必要です。

株式譲渡の場合、株式が売買されるだけではありますが、契約書の中身をしっかりと把握していきたいものであります。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
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起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

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