【事業承継】7割超の会社が経営上の問題と認識

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

先日、帝国データバンクより、「事業承継に関する企業の意識調査(2017)」が公表されました。

タイトルに記載した通り、企業の7割超が事業承継を経営上の問題と認識しているようです。

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企業の7割超が事業承継を「経営上の問題」として認識

中小企業における事業承継も問題は、税金の問題、株式の買い取り資金の問題ではなく、「経営上の問題」として認識している企業が全体の7割を超えている結果となりました。有効回答企業数が10,214社と記載されているので、大部分の企業でそのように認識していることが明らかになっています。

問題の所在:株価と税制と後継者

事業承継を、最優先の経営上の問題と認識している企業の意見では、次のように記載されています。

中小企業の事業承継ほど困難な課題はない。経営を良くしていけばいくほど株価は上昇し、後継者がこれを引き継ぐ手立てが失われている。税制の改正とともに、どのような条件があれば会社が後継者に譲れるかを真剣に討議すべきである。当面、M&Aなどの手段を選択するしかない(電気配線工事、埼玉県)

企業の業績が良くなればなるほど、会社の株価が上昇し、後継者の引継ぎ手法がなくなっていくというジレンマを抱えているようです。

これは業績の良い会社のオーナーに共通の悩みであり、株価が高くなればなるほど、相続税・贈与税の事業を承継する側の税負担が増加してしまいます。

株価:経営が良くなると、株価が上昇してしまう

税務上の株価評価は、会社の純資産、利益、配当実績等から算出されます。

会社の経営が良くなれば、会社は多額の利益を計上し、純資産が厚くなります。当然、それに連動して税務上の株価評価も高くなってしまうのです。

会社を後継者に譲るために、経営状態を上向きにしようとすると、承継コスト(相続税・贈与税)が高くなるというジレンマが生じます。相続税、贈与税の税率は最大で55%であり、自由に換金できない非上場株式を引継ぐことによる、税負担が優良企業であればあるだけ、多額になります。

高額な税負担が事業承継の妨げになっているため、事業承継税制が整備されました。しかし、要件が厳しく広く活用されているわけでもない状況です(税制改正を重ねて、要件が緩和されてきています)。

税制:平成30年税制改正で事業承継税制の拡大?

事業承継税制を幅広く、多くの企業に活用してもらうため平成30年の税制改正では事業承継税制が大幅拡大されるといわれています。税制改正大綱の取りまとめが12月14日と言われているので、実際に公表されるのを待つしかありませんが、M&A以外の親族内・従業員承継へのハードルが下がるかもしれません。

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後継者:M&Aを選択するしかない状況

現在の制度では、M&Aなどの手段を選択するしかないともコメントされており、中小企業の事業承継型M&Aが事業承継の手法として一般化してきていることが伺えます。

M&Aを選択するしかないと考えるのは、中小企業の株価の問題だけではなく、経営能力がある後継者候補不足も理由として挙げられます。

後継者不足については、別の帝国データバンクの調査でも明らかにされており、全国で3社に2社(66.1%)は後継者がいない(未定、未詳を含む)といわれています。

これからの事業承継

事業承継のタイミング

経営状況が良いときは株価が高く、承継コストが嵩むというジレンマがあるものの、事業承継は業績の良い時代に済ませておくべきであったという意見もあるようです。私はこの意見に賛成です。

事業を引継ぐ後継者の立場から考えると当たり前の話でもあります。業績が右肩下がりの会社を引継ぎたい人間は多くはいません。引き継ぐのであれば、それなりの安定性が担保されていて欲しいと考えるのが一般的ではないでしょうか。

親族内承継・従業員承継では一般的に、会社の財務内容を痛めつけることで株価を引き下げ、後継者候補に株式を譲り渡します。この手法を活用すれば、贈与税や相続税の承継コストは下がるかもしれませんが、引継ぎ後の経営資源が不足するため後継者が大変です(業績がよければすぐにカバーできるかもしれませんが)。

このジレンマを担保でき、現経営者が安心して後継者に自社株式を承継できるような事業承継税制に内容が拡大されることを12月14日までの2週間願いたいです。

地域経済全体の問題

個別の企業ごとの問題として事業承継問題をとらえるのではなく、地域経済全体の課題として考える視点が欠かせないとの意見もありました。

地域の名士と言われている企業が後継者不足になることは、珍しいことではありません。それほど地方の中小企業では後継者候補不足が叫ばれている状況です。

このような会社が後継者不足を理由として清算させるわけにもいかないので、親族・社内に後継者候補がいない場合は、社外(第三者に)承継を検討する必要があります。

地方の優良企業をなくさないため、地域の発展・人口増加のためにも、Uターンで地方に戻ってきてくれる若者にとって魅力的な街づくりをする等の、地域を挙げての取り組みが必要なのでしょう。

まとめ

7割超の企業で事業承継を「経営上の問題」としてとらえています。事業承継問題は、日本全体の問題です。

平成28年12月に中小企業庁から公表された事業承継ガイドラインでは、事業承継は「人(経営)の承継」、「資産の承継」、「知的資産の承継」の3つの経営資源を後継者に承継することとされています。事業承継は「資産(株式)の承継」だけではなく、「人(経営)の承継」と「知的資産の承継」の承継も同時に検討する必要があるので、簡単な問題ではありません。

解決すべき課題(株価、後継者、税制等)は数多くありますが、日本を支える中小企業の事業承継問題を解決しない限り日本の国力は下がる一方です。円滑な事業承継ができるような制度が整備されることを願っています。

澤田公認会計士・税理士事務所も事業承継問題の解決をお手伝いさせていただいております(親族内承継からM&Aまで全て対応可能です)。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。

代表プロフィール

【主な業務内容】
スタートアップ支援
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◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。

このような方がコスト重視プランの対象です

・毎日忙しく、税理士と面談する時間がない
・直接会って面談するよりも、メールやチャットで気軽に質問できるほうが望ましい
・別に税理士には会わなくていいので安くしてほしい

といった要望にお応えし、コスト重視プランを始めました。



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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

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