こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
TAmaster.No755に組織再編後の逆さ合併が適格再編になるかも!という記事が掲載されています。
逆さ合併とは?
逆さ合併とは、事業規模の小さな会社を存続会社とし、事業規模の大きな会社を消滅会社とする合併のこと。
一般的に合併は大きな会社が小さな会社を吸収することが多いため、逆のパターンは逆さ合併と言われています。
組織再編やM&Aの場面ではSPCが利用される
組織再編やM&Aの場面では、SPC(Special Purpose Company/特定目的会社)が利用されることがあります。
このSPCは組織再編やM&Aのためだけに設立された法人のことです。
LBOローンによる買収資金の調達、つまり、買収対象会社の会社のキャッシュフロー創出能力に着目した資金調達を実行する際によく利用されます。金融機関や投資家からの買収資金をSPCに集め、その資金で買収を行います。買収資金を集める箱だと思っていただければ理解が進むのではないでしょうか。
このSPCは買収が終わってしまってからは特に存在意義がありません。そのため、買収後にSPCか買収した会社のいずれかを合併により消滅させることが一般的です。
現状、再編後の逆さ合併は税制非適格
SPCと買収した会社が2つある状態の解消方法としては、
1)SPCを消滅会社とする逆さ合併と
2)SPCを存続会社とする合併
の2種類があります。
どちらを選択するのかは基本的には自由ですが、考慮しなければならない事項として「許認可」があります。
1)の逆さ合併である、親会社であるSPCを消滅会社とするケースを選択する理由としては、子会社である買収した会社が「許認可」を保有しており、合併等で許認可の引継手続きが煩雑なケース等です。
ところが、現状の組織再編税制では、一定のスキーム(株式交換等)により会社を買収した(1回目の組織再編)後に、SPCを被合併法人とする合併(2回目の組織再編)を行うと1回目の組織再編が非適格の組織再編となり、買収した会社を時価評価をする必要があります。
これは、1回目の組織再編が組織再編税制上の株式継続保有要件に抵触するためです。
例:適格株式交換の場合
適格株式交換により完全子法人化した場合は、
「当該株式交換後に当該株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人による完全支配関係が継続すること」
が求められています(法人税法施行令4条の3 18一)。
ただ、この後に合併等が行われることが見込まれている場合は、継続要件が少しだけ緩和されています。
「当該株式交換後に当該株式交換完全子法人を被合併法人又は完全子法人とする適格合併又は適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、当該株式交換の時から当該適格合併又は適格株式分配の直前の時まで当該完全支配関係が継続すること。」
完全支配関係の継続が、適格合併の直前まで継続していれば、適格株式交換としてあげますよという意味です。
あくまでも、完全子法人を被合併法人とした合併です。完全子法人とは買収した会社のことで、SPCではない(SPCを被合併法人とすると適格要件を満たさない)ので注意が必要です。
改正要望
SPCが合併存続会社として残るのであれば、支配継続要件を満たしますが、その逆は組織再編の適格要件を満たさないというのが現状の税法です。
これに対し、経済産業省は組織再編後に逆さ合併が行われて資産が移転しても経済実態には実質的な変化がないとして、株式交換等の組織再編によって他の会社を完全子会社にした後、当該完全子会社を存続会社、その完全親会社を消滅会社とする逆さ合併をした場合も、株式継続保有要件を満たす適格再編とするように求めているようです。
まとめ
M&Aの実務では、SPCを使った買収がちょくちょく出現します。
SPCを利用すると買収資金の調達等が行いやすいため、便利ではありますが管理すべき法人が増えるため煩雑です。そのため、暫く経ってから、合併等で法人を減らすことが一般的に行われています。
今回の改正案要望にも出ていたように、合併法人をどちらにするのか、連続した組織再編の場合は適格要件を満たさない等の、経済実態は同一ではあるが、税法的な取扱いは異なる等の落とし穴にはまらない様に注意することが大切です。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】