こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
TAマスターNo796に、法人税法132条の2による否認事例において、原告(納税者)が敗訴してしまったという事例が掲載されていました。
いやーーーー。
争点:組織再編行為に係る行為又は計算の否認
特定資本関係が合併に係る事業年度開始日の5年前の日より生じ、被合併法人の繰越欠損金の引継ぎ制限(法57条3項)の適用が除外される適格合併においても、法132条の2の適用ができるのか?が争点の1つです。
合併において、被合併法人の繰越欠損金の引継ぎを行うためにはいくつかの要件を満たす必要があります。
今回はその繰越欠損金の引継ぎ要件(5年超の資本関係)を満たしているにも関わらず、法132条の2の組織再編成に係る行為又は計算の否認の適用があるのか?というお話です。
法人税法132条の2は、「複数の租税法上の効果のうち未処理決算金額の引継ぎのみを否認することも許容される」と東京地裁は判決を下しています。
東京地裁の言い分としては、法57条3項は、「典型的な租税回避行為としてあらかじめ想定されるものを対象に定めた否認規定にすぎない」とばっさりと切り捨ててしまっているようです。
本件では、旧子会社の合併と同時に、新子会社を設立し、合併と同日に旧子会社の従業員、棚卸資産、商号、役員等を全て新子会社に引き継がせています。
この上で、東京地裁は、当該行為が、「事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、実態とは乖離した形式を作り出すものであり、不自然」、つまり「未処理欠損金額の引継ぎによる税負担の減少以外に本件合併を行うことの合理的理由となる事業目的その他の事由が存在するとは認めがたい」との判決を下しているようです。
繰越欠損金の引継ぎ要件である「5年」は満たしている
本件のケースでは、支配関係が生じてから合併事業年度開始の日まで5年が経過しているにも関わらず、法132条の2が出現しています。
*ヤフー事件の第一審では、「個別否認規定が定める要件の中には、法57条3項が定める5年の要件など、未処理欠損金額の引継ぎを認めるか否かについての基本的な条件となるものであって、当該要件に形式的に該当する行為または事実がある場合にはそのとおりに適用することが当該規定の趣旨・目的に適うことから、包括的否認規定の適用が想定しがたいものも存在することは否定できない」と判事されています。
本件では、旧子会社の合併と同時に、新子会社を設立し、合併と同日に旧子会社の従業員、棚卸資産、商号、役員等を全て新子会社に引き継がせるという、イレギュラーなことは行っておりますが、形式要件を満たしているにもかかわらず、法132の2が飛び出てくるんですね…
ヤフー事件の第一審のコメントはいったい…。
詳しい裏事情まで把握しているわけではないので、あくまでも私の憶測ですが、未処理欠損金額の引継ぎによる税負担の減少が今回の合併の目的の1つではあるものの、それだけでは合併は進まないのではないでしょうか。
取引先に社名が変更しましたとか、今後の振込はこちらにお願いしますとかお願いするのって結構めんどくさそうにみえるので…
まとめ
法132条の2によると、適格合併であり、繰越欠損金の引継ぎ要件を充足しているにも関わらず繰越欠損金の引継ぎを認めないことができるようです。
伝家の宝刀と言われている法132条の2を抜かれないような、イレギュラーなスキームを構築するのはけしからんということでしょうか。
組織再編を実行する際には細心の注意が必要ですね。
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