【スタートアップ】増資:第三者割当増資

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

会社設立後、資本金を増やして対外的な信用を増やしたい!、出資に応じてくれる投資家が現れた!といった場合にはどのような手続きを経ればよいのでしょう。

資本金を増やす=増資についてご紹介します。

増資:株主割当増資と第三者割当増資の2種類

株式会社が資本金を増加させることを、一般的に「増資」と呼んでいます。

増資の目的としては、会社設立後に対外的な信用を増やしたい、会社規模の拡大です。増資の方法としては、株式会社が新株を発行する「募集株式の発行」が一般的です。

募集株式の発行には非上場の会社の場合は大きく分けて2つあります。株主割当増資と第三者割当増資です。

株主割当増資とは、既存株主に対してその持株比率に応じて新株を引き受けてもらう増資のことです。
第三者割当増資とは、株主に株式の割当てを受ける権利を与えないで、特定の第三者に新株を引き受けてもらう増資のことです。

既存のある株主に対して、株式の割当てを行う場合であっても、持株比率に応じて株式の割り当てを受ける権利を与えない場合は、第三者割当増資になります。

株式発行の手続き

ベンチャー企業は資金調達の手段として、第三者割当増資(ベンチャーキャピタルに株式を引受けてもらう)が利用されることが多いため、非公開会社の第三者割当増資の手続きについてご紹介します。募集事項の決定機関等は、公開会社・非公開会社等によって細かく場合分けされています。

募集事項の決定

株主総会において、次のことを決定します(会社法199条1項、2項)。株主総会の特別決議が必要です(会社法309条2項)。

  1. 募集株式の数
  2. 募集株式の払込金額又はその算定方法
  3. 募集株式と引換えにする金銭の払込期日又はその期間
  4. 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

株主総会において募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)に委任することができます(会社法200条1項)。

この場合であっても、募集株式の数の上限及び払込金額の下限は株主総会で決める必要があります。

募集株式の引受けの申込みをしようとする者への通知

株主総会または取締役会で決定した、募集事項の内容を募集株式の引受けの申し込みをしようとする者に対し通知します(会社法203条1項)。

  • 株式会社の商号
  • 募集事項
  • 金銭の払込みをするときは、払込みの取り扱いの場所
  • 法務省令で定める事項
    • 発行可能株式総数
    • 株式会社が発行する株式の内容として会社法第107条第1項各号に掲げる事項(譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式)を定めているときは、当該株式の内容
    • 株式会社(種類株式発行会社に限る)が会社法108条第1項各号に掲げる事項につき、内容の異なる株式を発行することとしているときは、各種類の株式の内容
    • 単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数
    • 次に掲げる定款の定めがあるときは、その規定
      • イ 法第百三十九条第一項、第百四十条第五項又は第百四十五条第一号若しくは第二号に規定する定款の定め(譲渡等の承認機関、株式会社又は指定買取人による買取り、株式会社が承認をしたとみなされる場合)
      • ロ 法第百六十四条第一項に規定する定款の定め(特定の株主からの取得に関する定款の定め)
      • ハ 法第百六十七条第三項に規定する定款の定め(効力の発生)
      • ニ 法第百六十八条第一項又は第百六十九条第二項に規定する定款の定め(取得する日の決定、取得する株式の決定等)
      • ホ 法第百七十四条に規定する定款の定め(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
      • ヘ 法第三百四十七条に規定する定款の定め(種類株主総会における取締役又は監査役の選任等)
      • ト 第二十六条第一号又は第二号に規定する定款の定め
    • 株主名簿管理人を置く旨の定款の定めがあるときは、その氏名又は名称及び住所並びに営業所
    • 定款に定められた事項(法第二百三条第一項第一号から第三号まで及び前各号に掲げる事項を除く。)であって、当該株式会社に対して募集株式の引受けの申込みをしようとする者が当該者に対して通知することを請求した事項

募集株式の申し込み

募集株式の引受けの申込みをする者は、次の事項を記載した書面を株式会社に交付する形で申込みをします(会社法203条2項・3項)。

  • 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
  • 引き受けようとする募集株式の数

募集株式の割当

募集株式が譲渡制限株式である場合には、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議により、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者をさだめ、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定める必要があります(会社法204条1項2項)。

募集株式の割当て通知

募集の割当ての決定をした後に、株式会社は、申込者に対し、申込者に割当てる募集株式の数を通知する必要があります。

この通知は、払込期日(又は払込期間の初日)の前日までに行う必要があります(会社法204条第3項)。増資手続きを完了させるまでには、最短でも2日必要です。

出資の履行

募集株式の引受人は、払込期日を定めた場合は払込期日又は払込期間を定めた場合には、払込期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込の取扱いの場所において、募集株式の払込金額の全額を払い込まみます。

株主となる時期

払込期日が決まっている場合には、当該払込期日に、払込期間が定めてある場合には、出資の履行をした日に募集株式の引受人は株主となります(会社法208条1項、209条)。

税務上の取り扱い

増資の際の税務上の取り扱いには注意が必要です。発行会社、株主の税務上の取り扱いをご紹介します。

株式の発行会社の取り扱い

株式を発行することに対し、払い込まれた金銭の額が資本金等の額になります。

例:1株100万円で10株、新株を発行

現金預金 1,000万円 / 資本金等 1,000万円

【有利発行の場合】

募集株式を引き受ける者に特に有利な金額で株式を発行する場合は注意が必要です。

時価:1株100万円、発行価額:1株30万円で、新株を10株発行

現金預金 300万円  / 資本金等 300万円

この場合、有利な金額で株式を引き受けたものが、役員や従業員である場合、役員や従業員は本来100万円であるものを30万円で引き受けることができたという700万円分の経済的利益を享受したことになります。

そのため、発行会社は有利発行により、役員や従業員に所得税の課税が生じる場合には、発行会社は源泉徴収義務を負うことになります。源泉所得税が法定納期限までに納税されなかった場合、不納付加算税が生じるので注意が必要です。

ちなみに、不納付加算税は以下の通りです。

不納付加算税

原則:10%

納税告知を受けることなく法定納期限後に納付した場合:5%

正当な理由がある場合:課されない

株主の取り扱い

株主の取り扱いは時価発行増資と有利発行によって取り扱いが異なります。

時価発行増資の場合:払込をした金銭の額に付随費用を加算した金額が株式の取得価額となります。この場合、株式を取得した法人または個人には課税関係は生じません。

有利発行の場合は、上の株式の発行会社の取り扱いに記載した通りであり、役員または従業員の享受した経済的利益に対して所得税が課されることになります。

有利発行の金額によっては、募集株式の引受け人に、大きな課税が生じてしまうこともあるので留意が必要です。募集株式に関する課税関係はこの他にも検討すべき事項が数多くあるので注意が必要です。

登録免許税を忘れない!

実は、増資をした場合は、登録免許税が課されます。

株式会社の資本金増加の登記 増加した資本金の額1,000分の7
(3万円に満たないときは、
申請件数1件につき3万円)

資本金の増加額の0.7%も登録免許税として課税されてしまいます。

資本金が増える!と喜んでばかりもいられないのでご注意ください。あくまで、資本金の増加額です。払い込まれた金額のうち1/2までは資本金に計上しないことができます。全額を資本金にしないことで、登録免許税を節税することが可能です。

まとめ

増資の手続きと税務上の留意点について解説させていただきました。

一見、資本金が増加するだけなので税務リスクはなさそうに見えますが、時と場合によっては税務リスクが多分に生じることになります。

増資を検討している経営者の方は、一度税理士や司法書士の専門家に相談することをお勧めいたします。

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顧問契約の他に、会計・税務に限らない、個別コンサルティングも行っています。 個別コンサルティングでは個別税務相談をはじめとし、会計士試...
愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

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