オープンイノベーション促進税制について検討した。もう少し優しくしてほしいです。

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

令和2年の税制改正で新たに導入された、オープンイノベーション促進税制について検討してみましたが、もう少し優しくしてくれてもいいのになと思いました。。

オープンイノベーション促進税制の概要

株式会社等又はそのCVCが、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、そのスタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度です。

ただし、5年以内にその株式の処分等をした場合は、控除分が益金算入されます。

出典:経済産業省

クリックして200706_oizeisei_gaiyoshiryo.pdfにアクセス

要件/出資法人

①青色申告書を提出する法人
②スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指す法人
③株式会社等

→①と③はスタートアップ企業への出資を検討している企業であれば一般的には満たすのではないでしょうか。

となると、次なる問題は、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指す法人の定義です。まずは、スタートアップ企業について確認してみます。

要件/スタートアップ企業

出資を受ける側のスタートアップ企業には以下の要件が求められています。

① 株式会社
② 設立10年未満※1
③ 未上場・未登録※2
④ 既に事業を開始している
⑤ 対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定
⑥ 一つの法人グループが株式の過半数を有していない
☞なお、法人グループにおける出資割合の算定対象は、子会社、孫会社、曾孫会社まで。
⑦ 法人以外の者(LPS、民法上の組合、個人等)が3分の1超の株式を有している
☞すなわち、LPSや民法組合、個人投資家など、法人以外の者による出資割合が合計3分の1超である必要がある。
⑧ 風俗営業又は性風俗関連特殊営業※3を営む会社でない
⑨ 暴力団員等※4が役員又は事業活動を支配する会社でない

→①、②、③、④、⑥、⑦、⑧、⑨は一般的には容易に充足することができるのではないでしょうか。

問題は、⑤ 対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定です。

次はこちらについて確認してみます。

オープンイノベーション要件

本税制でいうオープンイノベーションとは、対象法人がスタートアップ企業の革新的な経営資源を活用して、高い生産性が見込まれる事業や新たな事業の開拓を目指す事業活動をいいます。

具体的には、以下の3点を満たすことが必要と記載されています。

①対象法人が、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動を行うこと

②①の事業活動において活用するスタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的なものであること

③①の事業活動の実施にあたり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を 行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること

①事業活動の内容

①においては、対象法人=出資する側の企業が、高い生産性が見込まれる事業や、新たな事業を開拓することを目指した事業活動であることが必要とされています。

具体的な例示が記載されているのでご紹介します。

付加価値の創出が認められる例

【対象法人】 国内市場向けの家具製造業を営む法人
【スタートアップ企業】 家具のサブスクリプション事業を営む海外の企業
【出資目的】 既存製品を海外市場で販売して現地の顧客データを収集することで、国内市場と異なるブランディングにより海外事業を拡大すること

既存製品の販売拡大ではあるものの、既存ビジネスとは大きく異なる市場環境においてブランド価値を変革することを伴うものであるため、「新たな事業の開拓」に該当

認められない例

【対象法人】 国内市場向けの家具製造業を営む法人
【スタートアップ企業】 家具のサブスクリプション事業を営む国内の企業
【出資目的】: 国内市場における、既存製品の販路拡大(申請内容だけではブランド価値の変革等新たな付加価値の創出が認められないもの)

既存製品の販売拡大であり、顧客に対して提供する価値にも何ら変化が見られないため、「新たな事業の開拓」には該当しない

こちらは、販路拡大だけではブランド価値の変革等がなく付加価値の創出が認められないとして、ばっさりと切り捨てられています。

②スタートアップ企業の経営資源

②として、スタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的なものであることが必要とされています。

経営資源が不足し、かつ、革新的なものである例

【対象法人】 縫製業を営む法人
【スタートアップ企業】 先端素材の開発に成功した企業
【出資目的】 スタートアップ企業の先端素材を用いた新商品の開発・販売に初めて取組む
<条件1>
先端素材は対象法人にとって不足するもの→〇
<条件2>
先端素材を用いた商品開発の実績はないため、対象法人にとって革新的な経営資源である→〇

経営資源が不足し、かつ、革新的なものではない例

【対象法人】 縫製業を営む法人
【スタートアップ企業】 対象法人が現に使用する衣服製造機械のうち大
半を過去5年間納入してきた企業
【出資目的】 従来の取引における信頼関係の強化
<条件1>
スタートアップ企業が有する縫製品製造機械は、対象法人にとって不足するもの→〇
<条件2>
スタートアップ企業が有する縫製品製造機械は、対象法人が既に広く使用しているものであり、革新的な経営資源とは認められない→×

単に、スタートアップ企業の有する機械を出資企業がりようするだけでは革新的な経営資源を保有しているとは認められないということのようです。

②スタートアップ企業への協力

オープンイノベーション要件として、出資する法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであることが必要です。

具体的には、以下の2つを満たす必要があります。

①事業活動の実施に関係するもの

②スタートアップ企業の成長に貢献するものであること

出資目的に関係し、スタートアップ企業の成長に貢献する例

【対象法人】 自動車製造業を営む法人
【スタートアップ企業】 自動運転用OSの開発に取組む企業
【協力内容】対象法人が安全装置開発のために蓄積してきた自動車事故のデータの提供
【出資目的】 自動運転事業への進出
<条件1>
出資主体のデータの提供によるOS改善は、自動運転事業への進出という出資目的に関係する→〇
<条件2>
出資主体のデータはスタートアップ企業のOS開発にとり重要であり、その成長に貢献するもの→〇

出資目的に関係し、スタートアップ企業の成長に貢献しない例

【対象法人】 自動車製造業を営む法人
【スタートアップ企業】 自動運転用OSの開発に取組む企業
【協力内容】対象法人の社員である弁護士をスタートアップ企業に出向させ、スタートアップ企業が抱える労務問題の解決を図る
【出資目的】 自動運転事業への進出
<条件1>
スタートアップ企業の労務問題の解決は、自動運転事業への進出という出資目的と関係がない→×
<条件2>
労務問題の解消がスタートアップ企業の成長に貢献するかは不明確であるため、追加調査が必要→△

出資元企業からスタートアップ企業へ弁護士を派遣するだけでは、自動運転事業への進出とい出資目的を満たさないため、×とされています。

以上から、オープンイノベーションに向けた取り組みが重視されていることが伺えます。

まとめ

スタートアップへの出資を活性化させるきっかけとなる素晴らしい制度だなーと税制改正の時には思っていましたが、実際に適用を検討してみると「オープンイノベーションに向けた取り組み」が曖昧な割に、結構厳しそうだなという印象を受けました。パンフレットにも純投資等を除くと記載されているため、単なる純投資を除外したいのはよくわかりますが不明瞭な取り組み要件はない方がありがたいなぁと感じた次第です。

少なくとも5年の保有要件や配当を受け取ってはいけないという定めだけで十分厳しい要件が課されていると思うのです…

確かに出資を受ける企業の手間は少なくなるように配慮されているようですが、実際は出資を受ける側がある程度動かないとワークしないのではないのか?という疑問が生じたりしています。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
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起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

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