M&A後は中小法人等と中小企業者に該当しなくなるかも。一度、しっかりと確認してみましょう。

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

今日は法人税の特例のお話です。

近年、中小企業が大企業にM&Aにより買収され、大企業の傘下に入るということが珍しいことではなくなってきました。

大企業の傘下に入れば、企業のブランド力、資金力をバックに今まで取り組みたくても取り組めなかった事業に取り組むことが可能になります。中小企業に不足していると言われる、ヒト・モノ・カネの3点を一気に解決することができる可能性を秘めいているのがM&Aです。

さて、そんなM&Aにより大企業の傘下に入った中小企業には、税務上どのような変化があるのでしょうか。

中小法人等と中小企業者によって取扱が異なる

法人税には、法人税法の規定による中小企業に対する優遇税制と、租税特別措置法の規定による優遇税制が2本立てで走っています。

いわゆる中小企業であっても、法人税法の想定している中小企業の範囲と、租税特別措置法の想定している中小企業の範囲が異なるのです。つまり、自分の会社は中小企業だと思っていても、実は中小企業ではなく特例が使えなかった…なんてこともあるので注意が必要です。

法人税法上は中小法人等

法人税法上は、税務上のメリットを享受できる中小企業のことを中小法人としています。

法人税法57条11項1号に定められています。

第1項の各事業年度終了の時において次に掲げる法人(次号及び第3号において「中小法人等」という。)に該当する内国法人 当該各事業年度

イ 普通法人(投資法人、特定目的会社及び第4条の7(受託法人等に関するこの法律の適用)に規定する受託法人を除く。第3号及び第58条第6項第3号において同じ。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(第66条第6項第2号又は第3号(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するものを除く。)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社を除く。)

ロ 公益法人等又は協同組合等

ハ 人格のない社団等

(下線は加筆しています。以下同様です。)

次に掲げる会社は中小法人等とするとして、イ、ロ、ハが箇条書きにされています。

ロとハは、一般的ではないので今回は無視すると、イにおいて、「普通法人のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの」が中小法人等に該当するとのことです。

ただし、括弧書きで第66条第6項第2号又は第3号に掲げる法人に該当するものを除くとして、資本金が一億以下であっても、一定の場合は除くよ、とされています。

第66条第6項第2号又は第3号はこのように記載されています。

二 大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人
イ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
ロ 相互会社(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)
ハ 第4条の7(受託法人等に関するこの法律の適用)に規定する受託法人(第6号において「受託法人」という。)

三 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(前号に掲げる法人を除く。)

資本金の額が5億円以上である法人と完全支配関係がある普通法人は中小法人等には該当しないということです。

いつの時点でか?という話では、事業年度終了時点で判定します。法人税法57条11項1号の冒頭に記載があるのでお見逃しなく。

租税特別措置法上は「中小企業者」

租税特別措置法上は、法人税法の中小法人等ではなく、中小企業者として定義されています。

租税特別措置法第42条の4第8項に中小企業者の用語の意義があります。

六 中小企業者 中小企業者に該当する法人として政令で定めるものをいう。

政令で定められているので、政令を確認してみます。租税特別措置法施行令第27条の4第12項です。

12 法第42条の4第8項第6号に規定する政令で定める中小企業者は、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人とする。

一 その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が一億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。次号において同じ。)の所有に属している法人
二 前号に掲げるもののほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人

法人税法上の中小法人等とは書きっぷりが異なります。

大規模法人として、資本金の額が一億円を超える法人(もしくは、出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千を超える法人)が設定されています。

発行済株式の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているか、3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人以外とされていますので、大規模法人に株式を保有されている場合は租税特別措置法上の中小企業者には該当しないということです。

ただし、平成31年の税制改正において、以下の法人も大規模法人として取り扱いうことになったので注意が必要です。

イ 大法人の100%子法人
ロ 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人

つまり、法人税法上で大法人となった場合には、租税特別措置法上も自動的に大規模法人となるということです。

中小法人等と中小企業者に与えられているメリットは?

中小法人等(法人税法)を確認してみます。

  • 法人税率の軽減
  • 貸倒引当金の繰入れ
  • 留保金課税
  • 交際費の損金不算入制度の特例
  • 欠損金の繰越控除制度の特例
  • 欠損金の繰戻し還付

法人税法上の中小法人等に該当する場合にはこれらの適用を受けることが可能でした。

法人税率は15%(課税所得800万円まで)が適用できたり、交際費の枠も800万円まで損金算入が認められています。それが中小法人等に該当するとなくなるという…おそろしいですね。

次に、中小企業者(租税特別措置法)を確認してみます。

  • 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
  • 所得拡大促進税制
  • 試験研究費の税額控除の特例
  • などなど他にもたくさんあります

わかりやすいところで言えば、30万円までは一括損金算入できる制度が中小企業者には認められていますが、それが使えなくなる可能性があるということです…

となると、10万円以上であれば、資産計上する必要があるという、iphoneやギャラクシーも資産計上しなくてはいけなくなるという面倒な時代がやってくるということです。

租税特別措置法については、似たような名前であっても控除限度額が拡大したり縮小したり要件が厳しくなったりするので、中小企業者のみが適用できるのかそうではなくても良いのかという点をしっかりと見極めることが重要です。

まとめ

法人税法と租税特別措置法で中小法人等と中小企業者の取扱を変えたのかはよくわかりません。交際費は措置法に規定があるのに法人税法の法人にくくられるし、一体なんででしょうか。

そんな事を言っていても仕方ないのですが、大きな会社に支配されている子会社については決算期ごとに詳細な検討をする必要があります。中小企業者に該当するのに該当しないものとして税金計算をすると大きな痛手を追うことになるので注意が必要です。。。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

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