こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
経営者の方は、給与とするのか外注扱いとするのか悩んだことがある方もおおいのではないでしょうか。
給与と外注費には明確な線引きというのが正直ありません。そのため、総合的な判断が重要になります。
給与とは?外注費とは?
まず、給与と外注費の大枠についてみてみます。
給与とは
給与とは、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合のことを言います。
世にいう、サラリーマン等が会社から支給される毎月支給されるものを給与と考えれば間違いありません。
給与については、納得感がある方が多いのではないでしょうか。
サラリーマンとして企業に勤務したことがある方であれば、給与明細を毎月受け取っていたと思います。
固定給+残業代+諸手当等が給与に該当します。
給与からは、所得税が源泉徴収され、住民税や社会保険料が天引きされます。
外注費とは
事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者に対して支給する、業務委託の対価です。
一般的に業務委託契約というのは外注のことです。
税法上定めらえている外注費を除き、企業は源泉徴収義務はありません。外注先は自社の従業員等でもないため、社会保険料を外注費から天引きする必要もないことになります。
外注費と給与を区別は?4点がポイント。
外注費と給与を区別するポイントが、消費税基本通達1-1-1-に記載されています。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
(1)~(4)について総合的に判断することで、外注費に該当するのか、給与に該当するのかを検討することになります。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
他人の代替が効くのであれば、外注費です。
契約内容にもよりますが、下請け等に業務を振ることが可能であれば外注費として判断することが可能です。
給与の場合、部下に仕事を振ることは可能ですが、ご自身でも会社に労働役務を提供する必要があります。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
成果物さえ期限内に提出すれば、日中に作業をしようが、深夜に作業をしようが、問われないのが外注費です。
仕事の進め方や、勤務時間を細かく指定しているのであれば、それは給与に該当します。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
外注の場合は、成果物の納品をしなければ、報酬がもらえません。一方、給与であれば不可抗力により、成果物の引渡ができなかった場合であっても、給与を受取ることが可能です。
成果物納入に対して一定のリスクを負っているのであれば外注、リスクを負っていないのであれば給与という判断になります。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
業務を遂行する上での、材料や用具を提供されているのであれば、給与です。
サラリーマンの場合は、会社に行けば文房具をはじめとして、机や椅子、PC、プリンター等、ありとあらゆるものが用意されています。
外注の場合は、外注先が原則として自分自身で材料、用具を準備する必要があります。
外注費が給与認定されると…税務上痛い目に合う
契約形態が業務委託という形式であっても、これらの判断要素に当てはめると、「給与」に当てはまるのであれば、税務上給与として取り扱います。
外注費として取り扱っていたものが、給与として取り扱われると、次のようなダメージを企業は受けることになります。。
2.源泉徴収漏れ
3.上記の税金納付漏れによる加算税等のペナルティ
1.消費税の仕入税額控除の否認
外注費が100万円(税別)の場合、別途8万円を消費税として支払う必要があります(現在、消費税率は8%ですが、2019年には10%に増税が予定されています)。
一方で、給与の場合は消費税が課されない(不課税)ので、消費税の計算上は仕入税額控除ができません。外注費であれば最大8万円が消費税の計算上、控除できていたのが、できなくなってしまうのです。
2.源泉徴収漏れ
外注費であれば、一定の職種に該当しない限りは、支払う側は源泉徴収義務を負いません。
一方で、給与を支給する場合、原則として源泉徴収する必要があります。
外注費として取り扱ってくれているのであれば、源泉徴収する必要がなかったものの、給与と認定された時点で源泉徴収義務を失念していたという取扱いになってしまうのです。
3.上記の税金納付漏れによる加算税等のペナルティ
外注費が給与として認定されることで、1.仕入税額控除の否認や、2.源泉徴収漏れが生じます。
これらは、本来納税すべき税金を納めていないと判断されてしまいます。
具体的には、過少申告加算税、延滞税、不納付加算税が課されます。
■過少申告加算税
期限内申告をしたが、修正申告や税務署による更生によって追加の税額が生じた場合に支払うペナルティです。
税務調査の通知前に自主的に修正申告書を提出した場合
なんと、過少申告加算税は課されません。
税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。(国税庁HPより)
税務調査の通知以後、更正・決定予知前に修正申告書を提出した場合
追加の税額×5%(新たに納める税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合には超えている部分については10%です)
期限内申告で修正申告・更正があった場合
追加の税額×10%(新たに納める税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合には超えている部分については15%です)
■延滞税
税金が納付期限までに完納できないときは、法定納期限の翌日から完納される日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。
延滞税かかかる場合
- 申告等で確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
- 期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき
- 更正又は決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき
延滞税率
延滞税の税率はややこしいです。
□ 納期限の翌日から2月を経過する日まで:
原則:は7.3%/年。
例外:平成26年1月1日以降は、「特例基準割合+1.0%」のいずれか低い割合
□ 納期限の翌日から2月を経過した日以後:
原則:は7.3%/年。
例外:平成26年1月1日以降は、「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
■不納付加算税
源泉徴収すべき源泉税額を、納付期限内に支払わなかった場合に課されるペナルティです。
ペナルティは納付すべき税金の10%です!
一定の場合には、5%に軽減されます。
まとめ
外注か給与の判定は、総合的な判断が必要なため、質問されてさっと回答できる類のものではありません。
また、判断を誤ると税額に与える影響が少なくないので慎重な判断が必要となります。
外注費として取り扱った方が、事務手続きも楽、仕入税額控除のメリットを受けられるため、企業からすればメリットが多いので、何事も外注費として取扱いたくなる気持ちはわからなくはないですが、実態をよくよく鑑みて、判定することをお勧めいたします。
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