こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
不動産シリーズの続きです。
不動産投資を行うと、ぼほ毎月税金を支払う必要があることを以下の記事でご紹介させていただきました。
毎月支払う税金、少しでも安くしたいですし、可能な限り安く済ませるべきです。
節税についてお話ししていると、頻繁に提案される(お客様が税理士である私に提案していただけます)スキームがあります。
それが、「親族に地代を支払えば、経費になるよね?みんな得するよねスキーム」です。
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生計を一にする親族への地代家賃は経費にならない
タイトルに回答を書いてしまいました。
所得税法上、生計を一にする親族への地代家賃は経費として認められません。
そのミラーとして、受取った側でも、受取家賃として収入としては考えません。
【国税庁HP:3 必要経費に算入する場合の注意事項】
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2210.htm
所有者が”生計を一”にする親族の場合は要注意
このスキームを思いつくのは、土地と建物の所有者が異なる場合です。
土地を「妻」が、建物を「夫」が所有しているケースが、まさに該当します。
このようなシチュエーションは頻繁に登場します。
・「親族に地代を支払えば、経費になるよね?みんな得するよねスキーム」を使った場合の利益:確かに妻にも分散するので一人当たりの利益は小さくなります
◇夫:利益800
ー建物の賃料収入を賃借人から受領(1,800)
-土地の地代(1,000)を妻に支払う
◇妻:利益700
-土地の地代を夫より受取る(1,000)
-固定資産税の支払い(300)
→所得税法上は、次のように考えます。
◇夫:利益1500
ー建物の賃料収入を賃借人から受領(1,800)
-土地の地代(1,000)を妻に支払う
-固定資産税の支払い(300)→妻では計上しない
◇妻:利益0
-土地の地代を夫より受取る(1,000)
-固定資産税の支払い(300)→夫で計上
同一生計の親族間での地代家賃の支払いや、地代の受取りを認めてしまうと、税率が低いほうに所得を移転することが容易なことがお分かりいただけたでしょうか(上のグレーのボックスです)。
所得の移転を防止するため、所得税法では、生計を一にする親族に対する支払いは経費として認めていないのです。
生計が”別”であれば認められる
条文(所得税法56条)、「居住者と生計を一にする配偶者~」とされており、生計を一にする配偶者等に対して支払うものが、経費性を否認されています。
つまり、生計が「別」であれば、経費として認められるという事です。
生計を一にするとは?
生計を一にすると、親族内の経費が認められなくて、生計が別であれば親族内であっても経費が認めれるということでした。
ここで、「生計を一にする」の意義について確認してみます。
所得税法基本通達2-47には次のように記載されています。
2-47 生計を一にするの意義
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
通達に記載の通り、「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではないようです。勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
結婚して家を出て行った場合であれば、生計は別と考えてよさそうです。ここでの判断を誤ると税額に多大な影響を与えてしまうので、しっかりと専門家に相談することをお勧めします。
というのも、親族に対する地代の支払いを検討する不動産オーナーは所得税率が高率な方が多く、税務インパクトが大きいためです。
まとめ
「親族に地代を支払えば、経費になるよね?みんな得するよねスキーム」は、多くの不動産オーナーが一度は思いつくスキームです。みんなが思いつきすぎて、あまりにも露骨に税金の付け替えができてしまうので、当該スキームは国税庁から封じられています。
不動産賃貸業で、経費を計上するには別の方法を検討する必要がありそうです。
確定申告でうっかり間違えて、同一生計親族に対する地代家賃の支払いを経費に計上しないように注意してください。
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