こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
本日、平成30年度税制改正大綱が自民党より公表されました。
事前の想定通り、「事業承継税制の拡充」もデフレ脱却・経済再生の枠組みの中で織り込まれていました。
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事業承継による生産性向上は大きな課題
中小企業の世代交代を行うことによる、生産性向上が待ったなしの状況となっています。
以前の記事でもコメントさせていただきましたが、事業承継を完了することは会社の業績アップ=生産性向上に多大な影響を与えるのです。
実際、経営者が高齢化すると、会社の業績が下がる、もしくは上昇しないというデータも公表されているほどです。
詳しはいかに記載していますのでこちらをご覧ください。
事業承継税制の拡充は10年間の特例措置
施行日以後5年以内に、承継計画を作成し、贈与・相続による事業承継を行う場合、以下の特例措置の恩恵を享受することが可能になります。
①猶予対象の株式の制限の撤廃
特例後継者が特例認定承継会社の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈(贈与等)により特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について特例後継者の死亡の日等まで納税を猶予されることになりました。
猶予対象株式の制限の撤廃:現状の発行済議決権株式総数の3分の2まで→全株式
納税猶予割合の引き上げ:現行80%→100%
*特例後継者:特例認定承継会社の特例承継計画に記載された特例認定承継会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせて特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有するものに限る)であり、当該同族関係者のうち、特例認定承継会社の議決権を最も多く有する者(特例承継計画に記載された後継者が2名または3名以上の場合には、当該議決権数において、それぞれ上位2名または3名の者(総議決権数の10%以上を有する者に限る))をいう。
*特例認定承継会社:平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に、特例承継計画を都道府県に提出した会社であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の認定を受けたものをいう
*特例承継計画:認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、当該特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。
澤田公認会計士・税理士事務所は「認定経営革新等支援機関」です。
②雇用確保要件の弾力化
現行の雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しないこととされました。
この場合は、その満たさない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されている者に限る)を都道府県に提出しなければならない。その理由が、経営状況の悪化である場合、正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、書類にその内容を記載する必要がある。
③後継者の対象を拡大
2名又は3名の後継者に対する贈与・相続に対象を拡大
*特例後継者:特例認定承継会社の特例承継計画に記載された特例認定承継会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせて特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有するものに限る)であり、当該同族関係者のうち、特例認定承継会社の議決権を最も多く有する者(特例承継計画に記載された後継者が2名または3名以上の場合には、当該議決権数において、それぞれ上位2名または3名の者(総議決権数の10%以上を有する者に限る))をいう。
④経営環境の変化に対応した減免制度を創設
将来の税負担に対する不安に対応するため、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例承継期間経過後に以下を行う場合等には、一定額が納税猶予額が免除されます。
1.特例認定承継会社の非上場株式を譲渡するとき
2.特例認定承継会社が合併により消滅するとき
3.特例認定承継会社が解散をするとき
*経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合:次のいずれかに該当する場合
イ.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字である場合
ロ.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社の売上高が、その念の前年の売上高に比して減少している場合
ハ.直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上である場合
二.特例認定承継会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価(直前の事業年度終了の日以前1年間の平均)がその前年1年間の平均よりも下落している場合
ホ.特例後継者が特例認定承継会における経営を継続しない特段の理由があるとき
⑤相続時精算課税の適用範囲の拡大
特例後継者が贈与者の推定相続人以外のものであり、かつ、贈与者が60歳以上の場合には相続時精算課税の適用を受けることが可能になりました。
親族外へ後継者候補に株式を贈与し、納税猶予の特例を受ける場合のセーフティネットが推定相続人以外のものまで拡大されました。
⑥代表者以外の者から贈与により取得したものも対象に
特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式も、特例承継期間内に当該贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り特例の対象となります。
事業承継は税制措置だけでは解決できない
税制面だけではなく、予算措置も含めた総合的な支援を行う必要があります。
中小企業の後継者問題は、後継者のマッチング等の支援、経営者の個人保証の適正化に向けた検討を行う必要があります。
親族内・従業員承継が可能であれば、事業承継税制を活用するメリットが見いだせますが、身近に後継者候補が不在の企業が急増しています。
税制の整備とともに、地元へUターンして地元企業の社長になるような、魅力的な地域づくり、企業づくりをしていくことも重要なのではないかと感じています。
まとめ
予想通り事業承継税制が拡充されました。
特例制度を利用することで、代表者以外の者からの贈与も特例の対象となり、後継者の数も2名又は3名まで増加しています(現行の事業承継税制も複数の贈与者からの贈与等も対象となるようです)。
事業承継問題は日本の深刻な問題です。経営を担う存在が地方では不足していることが、事業承継が円滑に進まない理由の一つです。
事業承継税制を利用できない場合は、第三者譲渡であるM&Aの手法も検討してみてはいかがでしょうか。
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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・スポット対応
・個別コンサルティング業務
◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。
このような方がコスト重視プランの対象です
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