【事業承継】親族だけでも株主問題は生じる。株式の共有

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

税理士会の研修へ行ってきました。テーマは事業承継のポイント&税務の盲点、講師は見田村元宣税理士でした(初めて知ったのが、なんと愛知県一宮市出身とのこと。愛知県出身と聞いて勝手に親近感をもってしまいました)。

事業承継ではよくある、株主問題についてご紹介させていただきます。

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事業承継では親族株主だけでも問題になるリスクあり

親族のみが株式を有している場合であっても、当然、思ったように事業承継ができなくなるリスクがあります。

親族のみであれば、被相続人(仮に父とします)の意向を尊重するのが一般的であり、当然だ、とお考えの方も多いはずです。

遺言を残すのがベター

遺言があれば、遺言の通りに相続財産をわけることになります。株式も同様で、遺言の記載通りわけます。

故人の意思を尊重してあげるのが残されたものができる唯一のことなので、よほど偏った遺言でない限り、その通りにしてあげたいものです。

遺言がない場合

遺言がない場合は、遺産分割協議で相続財産をわけることになります。

遺産分割協議が完了するまでは、株式は「準共有」状態にあるといわれています。簡単に言えば、相続人が共有している状態です。

株式の場合、相続人が3人であれば、各人の持分は各々三分の一の持分を有することになります。

議決権問題

株式が3人の共有状態になった場合は、どのように議決権を行使するのでしょうか。

会社法106条には共有者による権利の行使が定められています。

第106条  株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

下線部筆者加筆

会社法106条には、株式が2人以上の共有状態にある場合には、誰か権利行使する人を決めてくださいと規定してあります。どのように、権利を行使する者一人を定めるのでしょう。

権利を行使する者一人とは?

この権利を行使する者一人は、共有持分の価格に従い過半数をもって定めるとされています(最判平成9年1月28日判決)。

そして、この場合に、持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。けだし、準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。

なんと、過半数で決めてしまうようです。

事例

前提

社長(父):株式60%

相続人A(長男):株式40%保有、取締役

相続人B(次男):持株ゼロ

相続人C(三男):持株ゼロ

(1)妻は既に亡くなっている。

(2)BとCがAのことを嫌っており、BとCは会社経営に関わりたい。

当てはめ

相続人A、B、Cが父の保有していた株式の60%を相続します。

遺言があれば、その通りに株式を含めた相続財産を相続人間で分けて相続完了です。

遺言がない場合、60%は準共有状態になってしまいます。

相続人A、B、C、3人で準共有状態の株式の権利行使は、A、B、Cで権利行使をする人を決める必要があります。

BとCが結託することで、会社の60%の議決権を有することが可能になります。当然、議決権の過半数を有しているので、取締役の解任決議が可能になります(会社法339条1項、309条)。

まとめ

遺言がないことが原因で、被相続人の意思は全く尊重されない結果も生じることがあるのです。しかも、法律を無視しているわけではなく、法律に準拠した方法でです。

事業承継における株の取り扱いは非常にセンシティブです。

中途半端な状態で相続が発生すると、上述の事例のように事前の事業承継対策も水の泡です。

事業承継対策には時間がかかるというのは、このようなことが起こるからです。

事業承継の必要性を少しでも感じたのであれば、早めに対策に取り込むことをお勧めいたします。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

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