こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
今日は少し小難しいお話です。
M&Aをしていると、売手企業に役員借入金が多額にある会社を売却したいというご相談をいただくことがあります。
例えば、この役員借入金が1億円ある会社が売り手企業だとします。
売り手企業のオーナー(役員)が1億円を売り手企業に1億円貸しているということです。
仮に債務超過の会社であれば、株価自体は1円で売買されることになるでしょう。
しかし、売り手企業のオーナーが会社に対して貸付けている1億円は依然として会社に対する債権として残ったままです…1億円の負債を抱えた会社を買収するわけにもいきません。
役員借入金1億円をどうにかして消滅させる必要があります。
今回は消滅させる方法について検討してみます。
1.債務免除+繰越欠損金の利用
一番単純なケースからご紹介。
役員借入金を債務免除してもらいます。貸付をしている役員の立場からすれば債権放棄です。
そうすることで会社は役員からの借入金を返済する必要がなくなります。
しかし、会社からすれば返す必要のあった1億円を返さなければならなくなるので1億円分だけ債務免除「益」が発生してしまいます。当然、この債務免除益も課税の対象です。
債務免除益だけが発生してしていれば、そこで繰越欠損金の活用です。売手企業が繰越欠損金を保有しているのであれば、その繰越欠損金を債務免除益にぶつけることで「益」を小さくする事が可能です。
2.DESの検討
Desとは、Debt Equity Swapの略で、債務と資本の交換という意味です。
要するに借入金(Debt)を資本金等(Equity)と交換するということです。
1.役員が売り手企業に対して保有している貸付債権を売り手企業に現物出資。
2.売り手企業:貸付債権が現物出資されたため、借入債務(役員借入金)と、債権債務の混同により貸付債権と借入金が消滅します。
3.無事に役員借入金の消滅。めでたしめでたし。
となるのがDESです。
ただし、税務上注意が必要なのが、貸付債権の時価がいくら?額面なの?そうじゃないの?という論点があります。
額面であれば、貸付債権=借入債務が同額となり、課税上特に問題は発生しませんが、貸付債権<借入債務となる場合は、債務免除益が計上される懸念がある点に留意が必要です(1.債務免除の場合と似たような結論になるということです)。
債務免除が発生する場合は、現物出資する債権(つまり役員が貸し付けているもの)の時価を算定する必要がありますが、どうやって算定すればよいのだろう…という疑問が発生です。まぁ実務上債権の時価を算定するのは難しいですよね。
3.疑似DESの検討
2.DESでは債務免除益が発生する可能性がありました。
そこで、債務免除益が発生しない方法として、疑似DESが考えられます。
疑似DESは以下の手順で行います。
1.売り手企業が第三者割当増資を実施
2.売り手企業の社長が出資する(この資金は買手から貸してもらいましょう)
3.払い込まれた資金で役員借入金の返済
以上です。
これで、売り手企業の役員借入金が消滅し、会社の資本金等が増加が完了です。
役員借入金が多額の場合は合わせ技も検討しましょう。
役員借入金が多額にある会社の多くは、債務超過になり気味の会社です。
このような会社がM&Aで売却する場合は、株価1円+債務の返済●●円となっているケースが多いです。
買い手企業にも買収予算があるため買収予算内でのスキームの構築が必要です。疑似DESするにしても無制限に買い手企業の資金を利用できるわけではありませんし、純粋な貸付を行うにしても貸付金が無制限にあるわけでもありません。
限りあるM&A資金の中で、疑似DES+債務免除等の方法を組み合わせる等の柔軟な思考を持ったスキーム検討が必要です。
まとめ
DESや疑似DES等のスキームを検討する際には複雑な課税関係についても検討する必要があります。
どのスキームが一番良いかについては、しっかりと検討し最も税負担が少なくなり、M&A後に売り手企業がより成長できるようなスキームを検討することが望ましいです。
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