こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
確定申告もあと数週間でおしまい。
今回は、中古マンションを売却した場合の計算方法のご紹介です。
個人事業主や法人は中古の車を買うと節税になると言われていますが、非事業用の資産の場合はどうでしょう??
【個人事業主・フリーランス】ベンツは中古を買いなさい!は本当か。
結論:非事業用のマンションには中古耐用年数は使えません
いきなりの結論ですが、非事業用のマンション等に関する減価償却費の計算上、中古耐用年数は使えません。
これは減価償却資産の耐用年数等に関する省令できちんと定められています。
中古資産の耐用年数等として第3条では、「個人の業務」として使っている場合はと限定付きで記載されているためです。
とはいえ、非事業用のマンションについては、減価償却費が少なければ少ないほど、売却価額と取得価額の差が小さくなり、納税額が小さくなるのでお得なので中古耐用年数を利用する必要はないのですけどね。
第3条 中古資産の耐用年数等
個人において使用され、又は法人()において事業の用に供された所得税法施行令第6条各号()又は法人税法施行令第13条各号()に掲げる資産()の取得(()()())をしてこれを個人の業務又は法人の事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、前2条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる。ただし、当該資産を個人の業務又は法人の事業の用に供するために当該資産について支出した所得税法施行令第181条()又は法人税法施行令第132条()に規定する金額が当該資産の取得価額(())の100分の50に相当する金額を超える場合には、第2号に掲げる年数についてはこの限りでない。一 当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間()の年数
二 次に掲げる資産()の区分に応じそれぞれ次に定める年数()
イ 法定耐用年数(())の全部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数の100分の20に相当する年数
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数
非事業用資産は耐用年数が1.5倍
非事業用資産については中古耐用年数が使えないのです。
その代わり、非事業用資産についての減価償却は、耐用年数を1.5倍することが可能です(1.5倍に相当する年数に1年未満の端数があるときは、1年未満の端数は切り捨て。)。
これが何を意味するかというと、
ということを意味します。
例えば、事業用であれば、耐用年数10年のものを非事業用として使っていたとします。
その場合、耐用年数は15年で減価償却していきます(10年×1.5倍)。
300万円のものだとすると、毎年の減価償却費は以下のようになります。
耐用年数10年:30万円(300万円÷10年)
耐用年数15年:20万円(300万円÷15年)
5年後に、当該資産を400万円で売却したとすると、売却益の計算は次のようになります。
売却益(耐用年数10年):400万円‐(300万円‐30万円×5年)=250万円
売却益(耐用年数15年):400万円‐(300万円‐20万円×5年)=200万円
耐用年数15年の非事業用資産の方が、売却益が少なくなりました。
つまり、耐用年数が長い方がお得ということ。
非事業用の場合は、事業用のように減価償却費を計上しても良いことなんてないということですね。当然、中古耐用年数について検討する必要もなしと。
非事業用資産の計算は6か月に注意
事業用の減価償却資産だと、月割計算を行うと思いますが、非事業用資産の場合は、6月で切り上げて計算するようです。
つまり、6月以上は切り上げ、6月未満は切り捨てとして計算するということです。
事業用資産のようについつい月割計算をしそうになりますが、その点は注意が必要ですね。
第85条 非事業用資産の減価の額の計算
法第38条第2項(譲渡所得の基因となる資産の減価の額)に規定する資産の同項第2号に掲げる期間に係る減価の額は、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額につき、当該資産と同種の減価償却資産に係る第129条(減価償却資産の耐用年数等)に規定する耐用年数に1.5を乗じて計算した年数により第120条第1項第1号イ(1)(減価償却資産の償却の方法)に規定する旧定額法に準じて計算した金額に、当該資産の当該期間に係る年数を乗じて計算した金額とする。この場合において、当該資産と同種の減価償却資産が第134条第1項第1号イ又はハ(減価償却資産の償却累積額による償却費の特例)に掲げる減価償却資産に該当する場合には、当該計算した金額は、当該同種の減価償却資産の同号イ又はハに掲げる区分に応じ当該イ又はハに定める金額を限度とする。2 前項の場合において、次の各号に掲げる年数に1年未満の端数があるときの処理については、当該各号に定めるところによる。
一 前項に規定する1.5を乗じて計算した年数 1年未満の端数は、切り捨てる。
二 前項に規定する期間に係る年数 6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てる。
国税庁のHPに計算方法の例示が記載してあります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108_qa.htm
国税庁のホームページは中古の非事業用資産を事業用資産に転用した場合の事例です。
事業用に転用した際に、中古耐用年数を求めると思います。この場合、中古耐用年数の計算に利用する、「経過年数」には、業務の用に供されていなかった期間は含めない点に注意が必要です。詳しくは国税庁のHPをご覧ください。
まとめ
確定申告の時期は、法人の決算とは一味違った相談が沢山舞い込んできます。
法人の場合、購入した資産は基本的には業務用であるはずですから、非事業用であったり事業用という論点がでてくることはありません。
個人の場合は公私混同というかプライベートで利用していたものを事業に転用することがあるため、頭のスイッチの切り替えが必要になりますね。
居住用マンションを売却した場合も同じです。減価償却を早くしたいというインセンティブが働くのは個人事業を営んでいる方。サラリーマンの場合は減価償却が遅い方が、売却時にお得なのです。
確定申告は申告する方の属性によって、趣向がかわってくるので奥深い…
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