こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
合同会社の業務執行社員の退社手続きをご紹介します。
合同会社の社員とは?
まず、大前提として合同会社の社員は、株式会社の株主に相当します。
世の中には株式会社が沢山あるので、株主という単語の方が聞きなれていると思います。
さらに「社員」という単語が、会社の従業員という意味合いで世間一般では使われていることからも余計に紛らわしいです…
合同会社について話をする場合は、社員=株式会社の株主と理解していただければ結構です。
業務執行社員
社員が複数人要る場合には、業務執行社員という、業務を執行する社員を選ぶことが可能です。
業務執行社員は、株式会社の取締役に相当する人物です。
あくまでも、「社員」なので、出資していなければ業務執行社員にはなれません。
この点が、株式会社と大きく異なる点です。
株式会社であれば、所有と経営が分離しており、取締役は株主から選ぶ必要はありません。
合同会社は、所有と経営が一致しており、業務執行社員(取締役に相当)は社員(株主に相当)から選ぶ必要があります。
業務執行社員が退社する場合は??
本日の本題である、業務執行社員が退社する場合はどうしたらよいのでしょうか。
方法としては2つの方法があります。
1.出資持分の払い戻しによる退社手続き
2.出資持分の譲渡による退社手続き
この2つのうち、簡単な手続きで実施できるのは、2.出資持分の譲渡による退社手続きです。
簡単な手続きを取るケースが多いので、こちらを紹介いたします。
出資持分の譲渡による退社手続き
合同会社の社員は、法定退社事由によって退社することが原則ですが、任意に退社することも可能です。
会社法606条3項に、「やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できる」と記載があります。実務上は、やむを得ない事由があるとして退社するケースがほとんどです。
この場合、退社する社員の出資持分の全てを、他の社員譲渡することにより退社することになります。
出資持分の譲渡になるので、業務執行社員の持分譲渡は、社員全員の承諾が必要です。
他の社員全員の同意書の内容としては、他の社員に持分を譲渡する場合は以下のようなものになります。
「当会社の業務執行社員●●●は、その持分全部を■■■に譲渡して退社する」
このような同意書に、退社する業務執行社員も含めて社員全員が同意し、押印することになります。
この書類と、登記に必要な、登記申請書(会社実印も念のため)を記載して法務局へ行けばOKです(詳しくは法務局か司法書士さんへお尋ねください)。
持分譲渡の価額は?
財産評価基本通達194では、持分会社に対する出資の価額は、取引相場のない株式の評価に準じて計算した価額によって評価することとされています。
取引相場のない株式の評価では、類似業種比準方式、純資産方式、配当還元方式の評価方式が定められており、それに準拠して評価することになりそうです。
この点、財産評価基本通達は、あくまでも相続や贈与時に拠り所とするものですので、所得税法と法人税法上の評価をする際は若干評価方法に修正が入ります。
とはいえ、簡便的にも持分の価値を知りたいのであれば、まずは自社の純資産価額を把握することからです。
純資産の金額がわかれば、
で、おおよその譲渡対価を把握することが可能です。
*出資持分の払い戻しを受ける場合は、持分払戻請求権として評価する必要があります。
持分の払い戻し:退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない(会社法611②)とされていることから、持分の払戻請求権として評価することになります。
持分払戻請求権:
各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した価額の合計から、負債の合計額を控除した金額に持分を乗じて計算した金額、つまり純資産価額×持分割合で計算される点に、留意が必要です。
まとめ
合同会社の社員が退社する際の手続きについてまとめてみました。
株式会社の場合と異なり、出資持分がなければ業務執行ができない点が、合同会社特有です。そのため社員から脱退する場合には当然業務執行社員としての地位も失うことになる点に留意が必要です。
余談になりますが、不動産管理会社等は合同会社がぴったりです。
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