こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
個人事業主の方や、会社を設立しようとしている方からよくある質問です。
・起業するにあたり、法人でスタートすべきか、個人事業主としてスタートすべきか
この質問に対する私の回答です。
法人成りのメリット・デメリットについてはこちらに記載しております。
ネット上に落ちている情報は正しいとは限らない
インターネットで法人成りのタイミング等を検索していると、次のような回答に出会えると思います。
法人成りすべき2つのタイミング
・消費税の課税事業者になるタイミング(売上1000万円)
・所得が400万円~500万円程度
ネット情報ではこの2つのタイミングで法人成りしましょうと勧めています。
果たしてこれは本当に正しいのでしょうか?
たしかに、個人事業主が消費税の課税事業者になるタイミングで法人成りすることで、消費税の免税期間を最大で2年間延長することが可能です。
また、個人事業主の所得が400万円~500万円の場合、所得税と住民税が合計で約30%課されます。個人の税率(約30%)の方が法人の税率(約23%)に比べ高いため、一見有利です。
消費税の課税を免れる点や、法人と個人の税率の差を考慮すれば間違っていません。
ただ、社会保険料というものを見落としています。
社会保険のインパクトは強烈
実は先ほどの計算では、”税金”については検討していますが、”社会保険料”を考慮に入れていません。
美容業での個人事業主の場合、社会保険の加入が任意とされておりオーナーを含めた全員が個人で国民健康保険等に加入しているケースがほとんどです。
法人成りした場合、社会保険の加入は強制です。
強制適用になる社会保険が非常に厄介でして、法人税、所得税等に与える影響以上のインパクトがあります。
インパクトとしては、ざっくり給与額面の15%を追加で支払う必要があります。
仮に、従業員への給与の総支給額が1500万円の個人事業主(美容院のため社会保険は未加入)が法人成りすると、225万円(=1500万円×15%)が会社負担の社会保険料です。
法人成りしなければ会社が負担する必要のなかった社会保険料225万円を支払う必要がでてきてしまうのです。
社会保険料であるため、経費にはなりますが、それ以上のものではありません。
売上が1000万円を超えて消費税の課税事業者になるから~法人成りしようという安易な考えでは社会保険で痛い目を見ることになります。
社会保険の未納は厳しくチェックされている
社会保険の納付状況はしっかりとチェックされています。
年金事務所から社会保険が未納ですよ、と通知を受け取った場合、最大2年間分の支払いを要求されることがあります。
従業員等から預かっている社会保険料に加えて、会社負担の社会保険料も負担する必要があるため、資金繰りに与える影響は計り知れません。
社会保険なんて支払わなくてもいいや、と甘く考えていると痛い目にあいます。
生活費を検討する:法人成り後は給与を受取る形になる
法人成りを検討する際には、社会保険の影響だけではなく、ご自身の報酬の受取り方も変わってきます。
個人事業主の場合、売上から従業員への給与を含む経費や税金を支払った残りが生活費でした。
法人成りをすると、売上や経費は会社に帰属することになるため、経営者自身にも給与を支払う必要があります。
給与の額を増やせば、増やしただけ支払うべき社会保険料の金額は大きくなります(法人税は減りますが、所得税は増えます)が、給与を減らしすぎたのでは生活に貧窮することになってしまいます。
現状の生活水準で必要な生活費から、給与を計算したりする必要がでてきます。
一概に、売上が1000万円を超えたから法人成りをした方がお得だよ、とか、消費税の免税事業者を最大2年も延長できるから法人成りした方がお得だよ、と言い切れないのは社会保険や給与の設定に起因しているためです。
所得税・消費税・法人税・社会保険料を総合的に検討する
法人成りをすると、魔法のように税金が安くなるようなイメージをお持ちの方も、既に気が付かれたかと思います。
1つ、2つの税金だけに着目していてはいけません。法人成りすると所得税・法人税・消費税だけではなく、適用される社会保険の制度が変わってきます。
社会保険や給与の手取りまで検討する必要があるのです。
個人成りも増えてきている
最近では法人成りではなく、個人成りという言葉も耳にするようになってきました。
社会保険への任意加入であった個人事業主(主に美容院)が法人成りしたはいいが、法人化したメリットを享受できないため個人事業主に戻ることを個人成りと呼んでいます。
個人成りの要因としては、社会保険の負担と回答される方が非常に多いです。
特に美容院等のように社会保険の任意加入から強制加入になると今までの給与に加え追加で15%社会保険料の負担が発生します。この負担が苦しくて個人成りするケースが多いようです。
確かに、個人事業主よりも法人の方が節税対策も多様です。節税対策というものは儲かっているからこそできるものであり、儲かっていない(=社会保険の負担に苦しんでいる)ような場合には、個人成りを検討するのも一つの手です。
まとめ
ネットに掲載されている法人成りの情報は、ある側面からのみの切り口だったりします。本来的には多面的に法人成りをするのか検討してから実行するものです。
個人事業主で法人成りを検討している方、税金が高いなぁと漠然とした不安を抱えている方は一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
澤田公認会計士・税理士事務所でもスポット相談にて、法人成りのシミュレーションを行っています。
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