【個人事業主】法人成りの代表的なメリット・デメリット

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

個人事業主の方から法人成りのタイミングについてのご相談をいただきます。

個人事業主がよいのか、株式会社(合同会社)として事業を経営するのが良いのか、代表的なメリット・デメリットについてご紹介します。

法人成りをしてみたい!会社を大きくしていきたい!という発想は事業を営んでいるのであれば当然の発想です。もちろん、自分の目の届く範囲で経営をしていきたいという考え方も素晴らしいです。ビジネスのサイズにあった事業形態を採用するのが一番だと私は考えています。

一般的に、法人のメリットは個人事業主のデメリットと考えられます。法人にメリットがあるから脱・個人事業主、法人成りをするのですから。

法人成りのメリット⇔個人事業主のデメリット

1.社会的信用力がアップ、融資が受けやすくなる

世間一般で言われている話ですが、株式会社、合同会社の代表のほうが、個人事業主の代表というよりも社会的信用力は高いです。

嘘か本当かの真偽のほどはありませんが、一般的に法人のほうが融資を受けやすいといわれています(確かにその通りだと思います)。

これらの理由として考えられるのは、

事業の開始に要する設立費用と手間が、

法人>>>個人事業

であるためだと考えられます。

会社設立には、株式会社で最低21万円、合同会社で最低6万円が必要です。自分自身で会社設立ができれば追加の費用は不要ですが、自分だけで会社設立ができるほど会社設立は簡単ではありません…専門家報酬も追加でかかると考えておいたほうがよろしいかと思います。

会社設立時には、資本金をいくらにするのか、役員を誰にするのか等検討すべきことが沢山あります。

会社設立支援業務についてはこちらをご覧ください。

会社の設立時に留意すること等についてアドバイスします。 会社設立時は、株主構成、資本金の額、機関構成等の会社法の知識から、消費税の納税...

2.税金

法人成りを検討する一番の理由が節税ではないでしょうか。

◇税率

個人事業主は所得に対して最大55%の所得税と住民税が課されることになります。法人であれば現在は34%の実効税率です。これ以上は税制改正で法人税率が改正されない限りは上振れしません。

個人事業主の所得が500万円を超えたら法人成りを検討しましょうと言われています。

◇経費の幅が広がる

・法人成りをすると、法人から代表者及びその家族に対して役員報酬や給与を支払うことが可能になります。

これによって所得の分散効果が期待できます。

個人事業主には、家族への給与は青色事業専従者給与を一定の範囲内で支払うのみで、自分自身への給与という概念はありません。法人成りすることで自分の会社から自分自身へ役員報酬を支払うことが可能になります。

◇生命保険、社宅、日当も経費にできる

(生命保険)
個人事業主は、どれだけ沢山生命保険に加入したところで保険金は経費にすることはできません。生命保険料控除として最大12万円所得控除ができるぐらいです。

法人であれば、法人契約の生命保険に加入等することで生命保険の保険金を経費にすることが可能です。

(社宅)
法人が社宅を借り、代表者は法人の借りている社宅を又借りすることで、家賃の約半分を経費にすることが可能です。

(日当)
出張規定を作成することで、出張時に日当を付与することが可能になります。出張管理の手間が生じますが、出張が多い会社であれば日当を経費にすることができるので検討する余地はあると思います。

日当は給与課税もされないため、出張した従業員にとってもありがたい制度です。

この他にも法人成りをすることで享受できるメリットは沢山あります。

3.許認可事業

許認可事業の引継ぎが容易になります。

個人事業主が許認可事業の事業を後継者等に引継ごうとする場合、後継者等が改めて許認可を取得しなおす必要があります。

法人であれば、許認可は法人に帰属しているためその他の要件を満たしていれば改めて許認可を取得することなく、後継者等へ許認可事業を引き継ぐことが可能です。

法人成りのデメリット⇔個人事業主のメリット

1.赤字でも税金がかかる

個人事業主の方からすると理解できない法人のデメリット1つ目です。

法人は赤字でも税金がかかります。

その額、最低でも年間7万円です。

均等割というものが地方税に存在します。法人所在地の県内及び市内において事業を営むのであれば、黒字・赤字に関わらず資本金等の額に応じた一定額を支払ってください、というものです。場所代と考えればわかりやすいかもしれません。

事業を営んでいない実質的な休眠会社であっても、清算中の会社であってもこの均等割は必要です。

会社設立初年度は赤字だから税金は納めなくても大丈夫だと高を括っていると、7万円の納付書が届きびっくりすることになるのでご注意ください。

2.維持コストがかかる

法人は個人事業主と異なり、法人税の申告書が複雑です。

個人の確定申告書を作るのも大変ですが、それ以上に申告書が難しく、専用のソフトが必要です。無料の申告書作成ソフトもネット上にはありますが、申告書作成ソフトの価額の前に申告書の書き方がわからないと思います…

そのため、税理士に依頼せざるを得ず、税理士報酬が必要になってきます(ご自身で挑戦してみてもいいですが、法人成りを検討するぐらい利益が出ているのであれば専門家へ依頼することをお勧めします。餅は餅屋ではないですが、専門家に頼んだほうが労力やストレスも少なく済みますし、本業に専念できます)。

ちなみに、、、、

利益が1000万円の会社の法人税率が34%とすると、法人税は340万円です。

税理士報酬を100万円支払った場合は、利益が900万円(1000万円-100万円)になるので法人税は306万円に削減できることになります。

黒字の会社であれば100万円の税務サービスが実質66万円で受けられることになります。

役員の任期ごとに登記し直す必要があり、その都度司法書士への報酬が発生します。

3.社会保険への加入が必須

法人成りの最大のデメリットが社会保険への加入が必須な点です。

個人事業主の美容院や税理士事務所等は社会保険の加入が任意とされています。

法人は社会保険の加入は強制ですので、今まで社会保険に加入していなかった場合であっても法人成りのタイミングで社会保険に加入する必要が出てきます。

社会保険料は給与の14%相当を従業員負担、14%が会社負担という負担関係になっています。つまり、法人と個人合わせて支払った給与の約38%の社会保険料を負担する必要があるのです。

社会保険の任意加入事務所が法人成りして社会保険の加入事務所になる場合、今まで経費として発生していなかった従業員の社会保険が発生してくるということです。同じ給与を支給しているつもりが、法人成りすることで会社の負担は1.14倍です。

勤務先が社会保険に加入していない場合、従業員が国民健康保険等に自ら加入します。本来であれば日本国民は社会保険に加入しているはずですが諸事象があり社会保険料を支払っていない従業員もいるかもしれません。このような場合に手取りの関係から、外注扱いしてくれと頼まれるケースや給与の額面をアップしてくれと言われてしまう可能性もあるので留意が必要です。

まとめ

法人成りはメリットもありますが、デメリットもあります。

近年言われているのが、法人税よりも、消費税、社会保険料の負担が非常に大きいという点です。

というのも、社会保険料は額面の14%を会社が負担する必要があり、消費税はもうすぐ10%に増税です。反対に、法人税は世界の水準に合わせるために税率を下げようという動きが進んでいます(消費税等の間接税から税を徴収しようという方針をとっていることがわかります)。

法人成りが必ずしもベストな選択とは限らないので、事前によくよく検討することをお勧めいたします。

愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。

代表プロフィール

【主な業務内容】
スタートアップ支援
事業承継対策
M&Aサービス
税務顧問業務
スポット対応
個別コンサルティング業務

◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。

このような方が対象です

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・直接会って面談するよりも、メールやチャットで気軽に質問できるほうが望ましい
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といった要望にお応えし、コスト重視プランを始めました。

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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。

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