こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
日頃お世話になっている会計事務所様で、「会計事務所とM&A」というタイトルで研修講師をさせていただきました。
会計事務所運営をしているうえで、中小企業M&A場面に遭遇する機会は多いとは言えません。ただし、少なくもないというのが現実だと思います。
M&Aや事業承継という非日常的なケースにどのように対応すべきなのか、という視点からお話をさせていただきました。
概略についてご紹介させていただきます。
M&Aの概要
中小企業のM&Aのほとんどは株式譲渡です。たまに事業譲渡や会社分割もあります。
会計事務所として理解おくべき大切なことは、突然の売却相談に対応できるような準備をしておくことが必要です。
株式譲渡と事業譲渡
株式譲渡と事業譲渡について紹介させていただきました。
中小企業M&Aでは株式譲渡+退職金スキームが最も多いです。
その理由として、中小企業M&A、特に事業承継型M&Aでは売手企業に次のようなニーズが多分にあるためです。
株式譲渡のスキームであれば、これらの売り手企業の要望を全て叶えることができます。
一方、事業譲渡ではそうはいきません。
事業譲渡は事業のみの譲渡であるため、株式は売手株主の手元に残ってしまいます。
株式は残る、借入金の連帯保証は解消されない(事業譲渡の対価で借入金を返済できない場合)、代わりの経営者が売手企業に来てくれるわけでもない、という売手企業及び株主にとって微妙な結末になってしまいます。
会社分割
会社分割は会社の一部門を切り出し、会社を譲渡するスキームです。
会社を縦に切り出す分社型分割
と
会社を横に切り出す分割型分割
の2つがあります。
平成29年の税制改正により、一定の要件を満たす会社であれば税負担を気にすることなく分割型分割が行えるようになりました。
例えば、事業Aと事業B(不動産に多額の含み益あり)の2つの事業を行っている会社が、事業Aのみを売却したい、というニーズにも柔軟に応えることができるようになりました。
平成29年税制改正前は、事業Aと事業Bを横に切り出そうとすると非適格分割型分割に該当してしまい、分割法人に事業譲渡損益が生じ、株主にはみなし配当課税が課されてしまいました。
改正後は一定の要件を満たすのであれば、分割法人に事業譲渡損益も、株主にみなし配当課税も生じなくなったのです。
無駄な税金を支払うことなく、売手・買手双方にとって必要なもののみを売却することが可能になったのです。
合併が少ない理由
M&Aといえば、合併じゃないの?と思っているかたも少なくないはず。私もそのように思っていました。
ところが、実務上は、M&Aのほとんどは株式譲渡で行われています。
いきなり合併が行われていない理由としては次の理由が挙げられます。
合併すると合併法人と被合併法人が1つの法人になります。1つの法人になることで、双方にとって不都合になることが多いです。
・企業文化の違い:
IT企業と営業会社では企業文化が異なります。
給与水準の違い:
買い手企業の方が一般的に給与水準が高いケースが多いです。いきなり合併すると、売手企業の給与水準を引上げる必要があり、
就業規則の違い:
就業規則も売手企業と買手企業ではバラバラです。週休2日の会社と週休3日の会社が統合したら、多方面から不満が出てきそうです。
一般的に売りやすい会社
一般的に売りやすい会社と言われている会社についてご紹介させていただきます。
- 黒字であること。少なくとも3期以上連続で赤字になっていない。
- 借入金が通常の営業利益で弁済できる範囲内であること
- 真面目に経営していること。粉飾や不正経理をしていないこと。
- 企業価値を大きく毀損する簿外負債(退職金、土壌汚染、訴訟等)がないこと
- M&Aによってお互いに拡大する可能性がある業種であること。業界再編の最中の業界。
- 株式が分散していない会社(株式の分散は相続対策の観点からも望ましくないです)
- 子供に会社を継ぐ意思の有無を確認済みの会社
これに当てはまる数が多ければ多いほど、売りやすい会社です。
自分が会社を買収するという立場になれば当然のことが書いてあるだけです。これが会社を売却する当事者になると、見失いがち・見えなくなりがちなのでここでご紹介させていただいております。
会計事務所とM&Aの付き合い方
会計事務所がM&Aとかかわる方法は大きく分けて5つです。
- 清算・廃業まで顧問契約(M&Aはしない)
- M&A業者に丸投げ
- 自社でM&Aを実施
- 金融機関や他事務所が顧問先を売却していた…
- DDを実施する(相手探しはしない)
これらの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
クライアントがM&Aを検討し始めた。
クライアントがM&Aも視野に入れ始めた。
この場合に会計事務所として取るべき対応策です。
- まずは、相談してもらう
- M&A以外の手法がないのか、検討する
- M&Aに興味があるのであれば、簡易株価評価を行う
- M&Aをやると決めたら、進め方を説明する
- M&Aをする際に、守ってほしい2つのことを伝える
クライアントからM&Aについての相談を受けたら、M&Aについて教えてあげましょう。M&Aの概要について少しでも話ができれば、それで充分です。
「全然わかりません…」といって、M&Aの相談をしてもらえない状態だけは避けるようにしましょう。
まとめ
会計事務所の立場から中小企業M&Aにどのように付き合っていくのか等についての研修をさせていただきました。
結局は普段からのクライアント・顧問先とのコミュニケーションを密にすることが重要です。そして可能であれば、コミュニケーションの中にM&Aの話題を織り交ぜることです。
信頼関係がない時に、相続対策や事業承継対策について話しても本気で相談してもらえませんから。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・個別コンサルティング業務
・コスト重視プラン
公認会計士・税理士澤田憲幸に問い合わせしてみる
起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
澤田公認会計士・税理士事務所が貴社のブレインとなって全面的にサポートさせていただきます。