こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
会計事務所の皆様、クライアントにM&Aの話がでてきた際はどうしていますか?
まずはびっくりすると思います。
会計事務所として今後ますます増加していくだろう中小企業M&Aとの関わり方について検討してみます。
中小企業M&Aは増加傾向
昨今、中小企業のM&Aが増加しています。
今までのM&Aといえば大企業同士の合併、敵対的買収、TOB等のイメージが強いのではないでしょうか。上場企業のクライアントを抱えている事務所以外に、M&Aなんて全く関係ない話だったわけです。
近年、後継者不在の中小企業数が増加し、会社を売却することを決断する経営者の数が非常に増えています。
経営者の年齢分布の山はこの20年間で47歳から66歳へ移動しています。この年齢分布の山は、今後5年間でさらにスライドし、2020年代の初頭には経営者の多くが70歳台という驚くべき状況となることが予測されます。
さすがに70歳になると、後継者のことを考えなければなりません。体の○○が痛いとか、記憶力の低下、気力の低下など、経営者が弱体化してしまっては会社も元気がなくなります。人間は老化には勝てません。
後継者がいる企業であれば、後継者に会社を継げばよいだけなので、顧問税理士と相談し進めていけばOKです。
実は、後継者不在企業の数が増加しており、それに伴い清算・廃業するのであれば第三者にM&Aで売却してしまおうと考える経営者の数が増加し、M&Aの件数も増えているというのが日本の現状です。
会計事務所とM&Aの関わり方
中小企業にもM&Aが広く広まってきている中で、会計事務所はどのようにM&Aとかかわっていけばよいのでしょうか。
会計事務所がM&Aとかかわる方法は大きく分けて5つです。
1.清算・廃業まで顧問契約(M&Aしない)
2.M&A業者に丸投げ
3.自社でM&Aを実施
4.金融機関や他事務所が顧問先を売却をしていた。
5.DDを実施する(相手探しはしない)
一つ一つ確認してみます。
なお、顧問契約を継続すれば50万円/年の報酬が入ってくるとします(これが多いか少ないかはさておき)。
1.清算・廃業まで顧問契約
タイトルの通り、廃業まで顧問契約を締結し続けるかかわり方です。
会計事務所からM&Aは提案しない。顧問料が廃業するまで入ってきます。
M&Aを提案しないというスタンスですので、会計事務所としてM&Aの知識を蓄える必要性がそれほど大きくありません。必要最低限の概論程度理解していれば、実務上困ることはないはずです。
ただし、この選択では清算・廃業後に従業員の勤務先がなくなります。大げさに言えば、従業員が路頭に迷うことになります。
メリット:継続的な顧問料
デメリット:清算・廃業後の従業員の雇用が継続できない
廃業するまでの年数が5年だとすると、50万円×5年=250万円が会計事務所としての売上です。
2.M&A業者に丸投げ
会計事務所を運営していると、いろいろな電話がかかってきます。
いろいろな電話の1つに、M&A業者からの提携の電話があります。
M&A業者は「後継者不在企業」を探しているわけです。会計事務所のクライアントに後継者不在企業があるのではないか?という考えのもと、電話してくるわけです。
とはいえ、クライアントに後継者不在企業で優良な会社があるのであればM&A業者に丸投げするのは良いと思います。
メリット:丸投げできるので、会計事務所としては手間が少ない。顧問先にM&Aという選択肢を提供できる。
デメリット:なかなか売れないとM&A業者がそのクライアントの相手をしなくなる。まだ売れないのか?と経営者の矛先が会計事務所に向かってくる可能性がゼロではない。
M&A業者からの成功報酬×●%。
M&Aにより買い手企業が顧問を変更しなければ顧問は継続。
3.自社でM&Aを実施
会計事務所のクライアントにM&Aで会社を売却したい・会社を買収したいという顧問先がいる場合に、会計事務所自らが、買手候補企業、買収対象企業を見つけてくる方式です。
メリット:M&Aの報酬を直接受け取ることができるため実入りが良い。
デメリット:手間がかかる。相手を見つけることができないケースも多い。本音はM&A業者に依頼したいが、規模が小さくてと断られたからやむを得ずというケースがある。
アドバイザリー報酬まるごと全部
4.金融機関や他事務所が顧問先を売却をしていた。
気が付けば、顧問先が買収されていた…
会計事務所にとっては、最悪のパターンです。
1~3までに挙げさせていただいたような、メリットを享受できないパターンです。
デメリットは、大きいです。
・本来得られるはずであった、M&Aの報酬が得られない
・顧問先がなくなる可能性が高い
というデメリットだらけなのです。会計事務所にとっては良い点がゼロ…
M&Aをやらないというスタンス(1.清算・廃業まで顧問継続)であっても、顧問先が他社に売却等されてしまっては元も子もありません。
ゼロ
5.DDを実施する(相手探しはしない)
DDをするというM&Aとのかかわり方もあります。
これは買い手企業サイドと売り手企業サイドのどちらに付くかで業務内容が大きく変わります。
【買い手企業サイド】
買い手企業の顧問税理士である場合は、買い手企業からDDを依頼されるケースがあります。
買収を検討している企業の財務内容を精査することが求められます。つまり、会計に関する知識が必要です。中小企業の場合、税務リスクも見逃せません。
M&A実行後、そのまま顧問を依頼されるケースも少なくないので、しっかりとDDしましょう。
【売り手企業サイド】
売り手企業の顧問の会計事務所はDDされるのをサポートするという形でDDに参加することが想定されます。
買い手企業サイドが送り込んでくるDDを行う専門家が、売り手企業の会計処理等について事細かに質問してきます。社長や経理担当者だけでは回答できないことを顧問税理士として回答してあげることが重要です。税務調査の立ち合いをイメージしていただけると良いかと思います。
DD報酬
M&Aについても相談される会計事務所であるべき
M&Aと会計事務所のかかわり方は様々です。
顧問先にM&Aの提案をしない、清算・廃業まで顧問を継続するかかわり方もありだと思います。
中小企業のM&Aに長年関与してきた立場からすると、顧問先の会計事務所への相談なく、金融機関や他の事務所主導で顧問先がM&Aにより売却していたというケースが結構な数あります。これは別の事務所やコンサルが、顧問の会計事務所が案件に介入してくると案件がまとまらなくなるので、顧問の会計事務所にはM&Aのことを言わないでください等と上手いこと言ってたりします。
会計事務所を経営している立場からすると、これだけは避けるべきです。
M&Aといえば経営者の方にとっての一大イベントです、それを顧問の会計事務所への相談なしに決断するというのは、顧問先との信頼関係が構築できていなかったということです。会社の会計税務周りをケアしてきたのに最後の一大イベントに声がけしてもらえないのは悲しすぎます。
M&Aで顧問先がはく奪されることはある。ただし、今までの顧問先との関係性次第
M&Aのお話を会計事務所の先生方とさせていただくと、必ず聞かれる質問です。
「顧問先がM&Aしたら、顧問契約は終わりだよね?」
ほとんどの会計事務所の方はそのように考えていますが、実際はそうでもありません。
冷静に考えてみればわかることですが、M&Aで会社を売却し、社長が退任する。
となると、会社の数字、管理面、歴史について詳しく知っている人は誰がいるでしょうか。顧問税理士以外にいません。
このことを買い手企業はよく理解しています。そのため、よっぽど変な税理士、オーナーと仲が悪い等の事情がない限り顧問契約は継続するケースが多いです。
ただし、M&Aディール進行中に会計事務所としての存在感を出した場合、という条件付です。
会計事務所としての存在感というと、大袈裟に聞こえますが、社長が会計事務所のことを頼りにしていて、M&Aに協力的という程度で問題ありません。
逆に、金融機関や他の事務所が主導となって進められるM&Aの場合は、M&Aのタイミングで顧問契約が変更になるケースが多いです。先述した通り、経営者と会計事務所の関係性がそれほどよくないケースが多いためです。
つまり、経営者と税理士の関係性が良好であれば、M&Aで経営者が変更しても継続して顧問契約を依頼されるケースが多いということです。
まとめ
中小企業M&Aと会計事務所の関わり方についてご紹介させていただきました。
M&Aに対する取り組みに対しては、様々な考え方があると思います。
自分たちの預り知らないところでM&Aの話が進んでいた、という最悪パターンにだけは陥らないように普段から顧問先とのコミュニケーションを密に取り、関係性を深めていくことが重要です。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
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起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
澤田公認会計士・税理士事務所が貴社のブレインとなって全面的にサポートさせていただきます。