こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
最近、副業解禁のニュースを耳にする機会も増えてきました。大手企業では、ソフトバンク、花王、新興企業では最近上場が決まったメルカリ等は副業がOKのようです。
副業が解禁された場合、税金は?確定申告は?という副業に関するサラリーマンの方のお悩みについて税理士の視点から、検討してみました。
副業解禁
政府(厚生労働省)は「働き方改革実行計画(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定)」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。
厚生労働省はモデル就業規則を変更し、「副業・兼業」を第67条に追加しています。
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
変更前のモデル就業規則には、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言がありましたが、これが削除されています。
モデル就業規則に「副業・兼業」の条項を追加していることからも、2018年は副業元年と呼ぶにふさわしいですね。
副業と確定申告の関係
副業を始めるにあたり、気になることと言えば、税金ではないでしょうか。
副業をして一定金額以上の利益が出た場合、確定申告が必要です。
副業にも様々な形態があり、個人事業主(事業所得)として対価を得るケースや、アルバイトや正社員掛け持ちの給与として対価を得るケース等、様々なケースがあります。副業でいくら稼いだら確定申告が必要なのでしょう。
確定申告(所得税)が必要な場合
副業がテーマなので、1つの会社のサラリーマンを前提とします。
サラリーマン(給与所得者)で確定申告が必要な人は、原則として、以下のいずれかに該当する方です。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
(注) 給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。 - 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
副業をしている方で確定申告が必要になる多くの方が、黄色でハイライトした、2.か3.に該当するのではないでしょうか。これらに該当するのであれば確定申告が必要です。
確定申告(所得税)が不要な場合
ちなみに、巷で耳にする、”20万円以下であれば確定申告しなくても良い”という話は、確定申告義務の判定からきています。。
注意点:給与所得以外の所得が20万円以下であれば、住宅ローン控除の適用を受ける場合(適用初年度)やふるさと納税でワンストップ特例を利用しないで確定申告をする場合であっても、20万円以下の所得を確定申告で申告しなくても良いというわけではありません。
確定申告をするのであれば、20万円以下の所得も確定申告書上できちんと申告する必要があります。
確定申告をする必要がない、年末調整のみで処理が完結する給与所得者は、確定申告の手間等を考慮して申告不要とされているだけです。この点を誤解している方が非常に多いので注意が必要です。
住民税は20万円未満でも申告が必要
サラリーマンで給与以外の所得が20万円未満であれば、基本的には所得税の確定申告は不要でした。
実は、所得税の確定申告義務がない場合であっても、住民税の確定申告をする必要があるケースがあります。多くの人はこの事実を見逃しているのが現状です。
住民税にも確定申告制度があることに驚かれた方、確定申告(所得税)しかしていない、住民税の確定申告なんて知らなかったと冷や汗状態の方もいるのでは?そのような方のために、住民税の確定申告義務の判定方法を用意しました。心当たりがある方はチェックをお願いします。
住民税の確定申告の必要の有無の判定方法
■給与以外の所得が20万円超…
所得税の確定申告書を税務署へ提出するだけでOKです。
税務署が市区町村へ納税額等を通知してくれるため、市区町村へ住民税の確定申告書を提出する必要はありません。
■給与以外の所得が20万円以下…
・ケース1:所得税が還付になる場合は、税務署に所得税の確定申告書を提出すると思います(所得税が戻ってくるので、多くの方は申告しますよね?)。税務署へ確定申告書を提出するので、市区町村への申告は不要です。
・ケース2:所得税を納税する必要になる場合あっても、給与以外の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要です。ただし、市区町村への確定申告は必要です。
確定申告義務があるのに、申告しないのは脱税
サラリーマンで所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告義務はないということです。となると、市町村に確定申告書を提出するのは面倒だな、まぁいっかとなる気持ちが芽生えてきてしまうのが人間です。
しかし、これをしてしまっては住民税の脱税です。住民税には所得が20万円以下であれば申告不要というルールはありませんから。
市区町村に対しても確定申告を行うようにしましょう。最近は市区町村も税金を徴収するのに躍起になっているようです。後述しますが、副業でアルバイトをし給与所得のみの場合には普通徴収を選択させてくれない市区町村が増加しています。
*普通徴収とは、市区町村から自宅に住民税の納付書が届き、自らが納税するものです。サラリーマンの方の給与からマイナスされている住民税は特別徴収という形式です。
確定申告のやり方と必要書類(所得税・住民税共通)
申告義務がある!申告が必要です!と言われても、確定申告書の作成方法はわからないと思います。一度作成すれば、だいたいの作り方はわかると思いますが、間違っていたり追徴は避けたいですよね。税理士澤田のおすすめの確定申告のやり方と必要書類をお伝えします!
おすすめの確定申告のやり方
確定申告の時期になれば、地域の税理士会が確定申告の無料相談会を実施しています。ここで副業をしている旨を伝えれば、確定申告のやり方を教えてくれます。恐らくこれが一番簡単。
税理士の平均年齢は非常に高齢化しているため、アフィリエイトやせどり、アプリやネットを利用した副業だと理解してもらえない可能性があります。。。
そうはいっても、無料です。確定申告の費用を安く抑えたいという方は検討してみてください。
もちろん、近所の税理士事務所に依頼しても問題ありません。税理士に報酬が発生してしまうこと、確定申告の期限が近づいていると対応してくれる税理士を探すのが大変かもしれません。
澤田公認会計士・税理士事務所では個別コンサルティングという形で、確定申告書の作成レクチャーしていますので気になる方はご連絡ください。
確定申告に必要な書類
副業の所得の種類(アフィリエイト等なのか、報酬等なのか)によって細かな必要資料は異なりますが、一般的に次の資料が必要です。
・給与所得の源泉徴収票
・副業の売上・収入のわかる資料
・副業に使った経費がわかる資料
簡単に言えば、年末調整済の源泉徴収票と副業の利益がわかる資料があればOKです。
副業の売上と経費の金額がありません…と言われるケースがあるのですが、残っている資料をかき集めて頑張るしかありません。
副業をした時の税金は?
サラリーマンが副業をした時の税金はいくらぐらいになるのでしょう?
この質問に対する回答は非常に難しです。儲けがいくらか?ということがわからないと税金計算はできないからです。
いくら?と言われても結構困ってしまうのが本音です。サラリーマンであれば、年末調整で税金計算が完了しています。副業の利益をそれに加算して、税額計算をし直すのです。
税金計算の基本的考え方
源泉徴収票を見れば、勤務先から受取っている年収(給与所得)、支払った社会保険料の額、扶養親族、源泉徴収金額等、確定申告に必要な情報がほぼほぼ記載されています。
これに副業で得た利益(売上と経費の差額)がわかれば、大よその税金シミュレーションが可能です。
税金計算は、以下の算式で計算されます。
副業がある場合
副業がない場合
この2つの算式を見ていただければわかる通り、副業の有無で変わるのは、副業による所得だけです。
副業による所得がわかれば、給与と副業の所得を把握できます。それから各種控除項目をマイナスしたものに、税率を乗じることで、税額が把握できます。
税率は以下の表のとおりで、所得金額が大きくなれば税率が高くなる累進税率が採用されています。副業で儲かったため、税金が不安、という方は簡便的にでもいいのでシミュレーションしてみることをお勧めします。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(注) 例えば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。700万円×0.23-63万6千円=97万4千円
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
払い方
実は税金の支払いは、結構面倒です。支払方法は複数の選択肢がありますが、電子申告(e-tax)を利用している必要があったり、支払う前に事前手続きが必要だったりします。
一番わかりやすく、簡単な税金の払い方は、近所の税務署から”納付書”をもらってきて、金融機関等で納付する方法です。
副業は会社にバレる?会社バレの経緯
政府の公表したモデル就業規則には、「副業・兼業」が追加されました。とはいえ、副業を許してくれない会社は依然として多いです。
ソフトバンク、メルカリ、花王のような大企業であれば、副業を容認する余裕はあるかもしれませんが、中小企業の多くは副業を容認するほどの余裕がないのが実態です。
会社にバレないように副業をしたい!会社バレだけはさけたい!
このようにお考えの方は多いです。副業が会社にバレるルートをご紹介します(反対に、ここに気を付ければ副業がばれる可能性は小さくなります)。
住民税で会社にバレる
副業をして、利益が出た場合には確定申告をする必要があります。
飲食店でのアルバイトや他の会社での勤務が副業である場合は、会社にバレる可能性が非常に大きいです。
アルバイトや他の会社からも”給与”つまり”給与所得”を受取ることになります。
2か所以上から給与の支払いを受けている人は、確定申告義務があります(一部例外もあります)。
確定申告の情報は税務署から市区町村へ通知されます。その後、市区町村から勤務先へ通知されます。市区町村からの通知には所得金額と住民税額が記載されています。
同期で同じぐらいの年収であれば、同じぐらいの住民税額を支払っているはずです。住民税額が多いと、副業をしているのではないか?という疑惑が生じ、そこから副業をしていることが発覚してしまうのです。
確定申告書の不備でばれる
アルバイト等の給与所得となる仕事以外の副業をしている(アフィリエイトやデザイナー等です)場合、住民税の徴収方法を選択することができます。
選択方法は、1)給与からの天引き(特別徴収)、2)自分で納付(普通徴収)の2つから選択ができます。
選択するには、確定申告書に選択するかしないかをチェックする箇所があるので、ご自身が希望する住民税の徴収方法に〇をつけるだけです。
なぜ、確定申告書の不備で副業がばれるのか?といえば、「自分で納付」に〇をつけ忘れる方が多いからです。
税務署の無料相談会では確定申告書を作成まではしてくれますが、住民税の徴収方法まで税理士から尋ねられるかは微妙です(会社にバレたくないです、といった話をしていただければ普通徴収にできますよ、とアドバイスはできますが。)。
ご自身で確定申告書を作成した場合も、売上や数字等の部分を埋めるのに精いっぱいで、住民税の徴収方法まで気が回らず(もしくはこの段階で住民税の徴収方法を選択できることを知らず)、確定申告書を提出してしまうことが非常に多いです。
その結果、勤務先に副業所得も含めた住民税が通知されて副業がばれるという残念なメカニズムです。
「〇」を確定申告書に記載するだけです、忘れずに「〇」を付けるようにしましょう。
市区町村のミスでばれる
確定申告書で、住民税の徴収方法を「自分で納付」と「〇」を付けた場合であっても、勤務先に副業の金額も含めた住民税額が通知されるケースがあります。
これは市区町村の住民税担当者の人為的なミスによるものです。
今の時代でも人為手的なミスがあるようです。このようなミスを防ぐためにも、市区町村に電話し、必ず普通徴収にしてください!と念押しすることがお勧めです。
噂話でばれる
税金とは関係ないですが、副業がばれるケースとしてよくあるのが、会社で仲の良い同期一人だけに、副業をしていることを話してしまうケース。気が付いたら、副業のうわさが社内に広まっていたということもあります。
誰にも知られたくないのであれば、副業をしていることは話さないほうが良いです。
まとめ
副業について税理士の観点からまとめてみました。副業解禁と言っても一部の大企業のみでしょう・・・
税金から副業がばれることがあります。今回記載した以外の経緯でも、実は副業がばれることがあるのですが、細かい話になるので気になる方は別途ご相談ください。確定申告書を作成し、納税額の計算をしてみないと、結論でないという厄介パターンです…
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・個別コンサルティング業務
・コスト重視プラン
公認会計士・税理士澤田憲幸に問い合わせしてみる
起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
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