こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
不動産オーナーの中には、資産管理会社(不動産管理会社)を設立すべきか、個人で所有し続けるのか漠然と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、個人投資家間で注目の資産管理会社を利用するメリットについてご紹介いたします。
資産管理会社(不動産管理会社)設立のメリット
資産管理会社(不動産管理会社)設立の最大のメリットは、税務メリットを享受できる点です。
代表的な税務メリットをご紹介いたします。
個人と法人の税率差によるメリット
資産管理会社(不動産管理会社)を設立する最大の理由はこれです。
個人と法人の最大税率が異なることによる、税率差メリットを資産管理会社(不動産管理会社)を享受することができます。
個人の場合、所得が4000万円超の場合は所得税+住民税で55%の税率が課されます。
法人は中小企業の実効税率は約34%です。利益に対して34%が課されるのみです。
個人の55%と法人の34%の差は21%。
仮に所得が1億円だとすると、2100万円分も税額に差がでる計算です。
1億円×55%=5500万円
1億円×34%=3400万円
所得が1億円にもなると税額もインパクトがありますね。2100万円といえば、サラリーマン5人分ぐらいの年収です。
個人と法人の最大税率の差が資産管理会社(不動産管理会社)を設立するとお得だよ、と言われている最大の理由です。
資産管理会社から役員給与を支払うことによる所得分散効果
資産管理会社(不動産管理会社)の次なるメリットが、資産管理会社(不動産管理会社)が役員に対して給与を支払えることです。
なぜメリットになるのか?というと、この役員給与は法人の費用としてカウントされます。
資産管理会社の役員を、父、母、息子、娘という構成にしておけば、家族4人に対して役員報酬を支払い、所得分散を実施することが可能です。
株式投資のための資産管理会社ではなく、不動産投資のための資産管理会社であれば、1年間の利益の金額をそれなりの精度で見積もることが可能です。見積もった利益額をベースに、法人税、所得税等の各種税額の合計が最も小さくなる値を探すことで投資に対するリターンを最大化することが可能になります。
役員給与に対する給与所得控除の利用
役員給与を支払うことで、受取った側は給与所得控除というものを受けることができます。
年収600万円の役員報酬を資産管理会社(不動産管理会社)から受取っている場合であっても、額面600万円に対して税金が課せられるわけではありません。
給与を受取っている人には給与所得控除が認めらえており、年収600万円の場合であれば174万円を控除することが可能です。
この給与所得控除は給与を受取る人ごとに適用ができるため、父、母、息子、娘が各々資産管理会社(不動産管理会社)から給与を受取っている場合は、各々が享受できることになります。
例として、父、母、息子、娘がそれぞれ600万円/年の役員報酬を受け取っている場合であれは、696万円(=174万円×4)が実際に経費として支出したキャッシュがないにも関わらず税金計算上は控除されることになり税務メリットを享受できていることになります。
各種保険金の損金算入
個人の場合、多額の生命保険等に加入していたとしても最大で12万円までしか所得控除を受けることができません。
しかし、資産管理会社(不動産管理会社)が法人として生命保険に加入することで、生命保険料を経費計上することが可能となります。
保険の種類によっては一部しか費用として認められないものもありますが、個人では12万円までしか保険金を控除できないことを考えると、法人で保険に加入するメリットは非常に大きいです。
生命保険を活用すれば、修繕費の積立てすることも可能です。当然、支払った保険料の一定金額は経費にもなるので、節税しつつ将来の修繕に備えることが可能になります。
相続財産の増加防止による節税効果
前述の資産管理会社が役員給与を支払うことにより、相続財産防止による節税効果を得ることが可能になります。
個人で不動産を所有している場合には、不動産から生じる収益は不動産のオーナーに帰属します。これでは不動産から生じる収益がオーナーに蓄積されていくため、相続対策にはなりません。
さらに、不動産投資実行時に金融機関から起こした借入金も時の経過とともに減少していくはずなので、相続税が時の経過とともに増加します。
資産管理会社(不動産管理会社)を設立し、役員給与をご家族に支払うことで所得分散による節税効果だけではなく、実は相続対策も実施することが可能になるのです。
資産管理会社(不動産管理会社)にデメリットはないの?
資産管理会社(不動産管理会社)のメリットを見ると、「それなら設立しないと損じゃないか!デメリットなんてあるの?」という声が聞こえてきます。
実は、有能に見える資産管理会社(不動産管理会社)にもデメリットがあります。代表的なデメリットについてもコメントさせていただきます。
法人と個人を区分する必要がある
資産管理会社(不動産管理会社)の設立前であれば、不動産の所有者は個人であり、特に区別する対象もありませんでした。
しかし、資産管理会社を設立後は法人に帰属する損益と、個人に帰属する損益を明確に分類する必要があります。
資産管理会社(不動産管理会社)は「法人」であり、「個人」とは別物なのです。そのため区分して損益管理をし、税金計算をする必要が出てくるのです。
赤字であっても税金を支払う必要がある
法人の場合、赤字であっても「均等割」という税金を支払わなければなりません。
均等割は資本金等の額等によって決定されますが、一般的な最低金額は7万円とされています。
この均等割は赤字であっても支払う必要があるため、留意が必要です。
社会保険への加入義務
法人の役員及び従業員は社会保険への加入義務があります。
健康保険・厚生年金保険へは加入する必要があるため、社会保険料の負担を考慮する必要があります。
法人の維持費がかかる
法人には年に1回、法人税の申告書を提出する義務があります。法人税の申告書は個人の確定申告書以上に複雑で、未経験の方が作成するには時間と手間を要します。
そのため税理士への支払い報酬が発生します。なお、澤田公認会計士・税理士事務所では不動産投資家プランをご用意させていただいております。
社会保険の加入手続きや登記事項の変更等においては、社会保険労務士や司法書士への報酬が発生することがあります。
相続税対策での利用は事前の検討が重要!
資産管理会社(不動産管理会社)を相続対策に利用したいというニーズが当然あると思います。
資産管理会社(不動産管理会社)を設立すれば相続対策に利用することも可能ですが、事前の準備が重要です。
株主を誰にするのか?
現不動産オーナーの年齢が70歳の場合、現不動産オーナーが株主となって資産管理会社(不動産管理会社)を設立すべきでしょうか?それとも後継者を株主として会社を設立すべきでしょうか?
自分が保有する不動産を会社に移転させるのだから、当然株主には自分がなる!とおっしゃる方がいますが、相続対策という観点からは微妙です。
株主を誰にするのか?という問題は、資産管理会社(不動産管理会社)へ移転する不動産の規模や不動産の生み出す収益の金額に応じて総合的に勘案すべき事項だからです。
いつ資産管理会社(不動産管理会社)を設立するのか?
いつ資産管理会社(不動産管理会社)を設立するのか?という事は非常に重要です。
資産管理会社(不動産管理会社)が、不動産を取得してから3年間は当該不動産の評価額は「建築価額」になります。
個人所有であれば、固定資産税評価額で評価できたものが、資産管理会社(不動産所有会社)が不動産を保有することになったがために「建築価額」で評価するはめになり、資産管理会社(不動産管理会社)を設立したら損をしたというケースもあります。
資産管理会社(不動産管理会社)のデメリットを事前に把握していないがために生じるお話です。相続発生時期を先読みすることは難しいですが、このようなことも発生しうるというアドバイスができるのが良い税理士ではないでしょうか。
まとめ
資産管理会社(不動産管理会社)のメリット・デメリットをご紹介させていただきました。
個人に比べて資産管理会社(不動産管理会社)は節税メリットが沢山ありますが、相続税を見据えた場合には事前の準備が必要となります。
相続税の観点からは、株主を別の人にしたほうがお得だったのに!というケースによく遭遇します。正直、株主変更は面倒です。面倒なことを避けるためにも、資産管理会社(不動産管理会社)設立前に税理士相談することをお勧めいたします。
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