【事業承継・相続】相続時精算課税のメリット・デメリット

こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。

相続時精算課税制度、聞いたことありますか。2500万円までの贈与であれば「非課税」で贈与ができる制度です。

2500万円まで非課税で贈与ができるなら、使ってみようと思う方も少なくないはず。相続時精算課税制度のメリット・デメリットについてまとめてみました。

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相続時精算課税制度とは?

60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。相続時精算課税制度を利用すると、父母又は祖父母が亡くなった際の相続税の計算上、相続財産の価額に当該制度を適用した財産の価額が組み込まれることになります。なお、贈与時に支払った贈与税があれば贈与時に贈与税額から控除されます。

相続時精算課税制度とは、贈与税と相続税を一体化して考える制度のことです。

なお、従来の税制では、贈与をした場合は贈与税が、相続をした場合はそれぞれ相続税が課されていました。

誰が相続時精算課税制度を利用できるの?

誰でも相続時精算課税制度を利用できるわけではありません。以下に当てはまる場合に相続時精算課税制度の利用が可能です(一部例外もあります)。

贈与をする人:60歳以上の父母又は祖父母
贈与をされる人:20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫

適用を受けるための手続き

相続時精算課税制度を適用する場合、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

〔添付書類】

◇贈与税の申告書

◇相続時精算課税選択届出書

◇受贈者の戸籍謄本又は抄本その他の書類で、次の内容を証する書類

  • 受贈者の氏名、生年月日
  • 受贈者が贈与者の推定相続人である子又は孫であること

◇受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類

◇贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写しなど)で、次の内容を証する書類

  • 贈与者の氏名、生年月日
  • 贈与者が60歳に達した時以後の住所又は居所(贈与者の平成15年1月1日以後 の住所又は居所を証する書類でも差し支えありません。)

メリット

相続時精算課税制度には3つの代表的なメリットがあります。

2500万円までは非課税

相続時精算課税制度を利用する場合、2500万円分の贈与であれば税金が課されません。

2500万円の非課税枠は、贈与を受けた人に紐づくものではなく、相続時精算課税制度を適用した贈与者の数に。つまり、父母がそれぞれ相続時精算課税制度を選択し、子供が2500万円ずつの資産を贈与で受領した場合の非課税枠は5000万円(2500万円×2)となります。

一方で、暦年贈与の場合には、非課税枠が110万円しかありません。

多額の資産を贈与により、子供や孫に移転したい場合には、相続時精算課税制度を利用するのも一つの手です。

参考:暦年贈与と相続時精算課税の税金の差

*暦年贈与は特例税率を使用しています。

暦年贈与相続時精算課税制度
基礎控除前税率控除額税額税率控除額税額
110万円020%2500万円0
1000万円30%90万円177万円0
1500万円40%190万円366万円0
3000万円45%265万円1035万円100万円
4600万円50%415万円1830万円420万円
8000万円55%640万円3699万円1100万円

税金支払いの先延ばし効果

相続時精算課税制度を利用することで、2500万円までは非課税で贈与をすることが可能です。2500万円を超える場合であっても、超えた部分に対して20%の課税で済みます。

上の税率比較表に記載した通り、贈与税額が4600万円の場合、暦年贈与では1830万円ですが、相続時精算課税では420万円の課税です。この差額1410万円(1830万円と420万円)は、相続時に清算されます(これが相続時精算課税制度と呼ばれている所以です)。

価額の固定による節税効果

相続時精算課税制度を行うと、相続時に、相続財産に加算されます。この加算される額は、贈与時の価額です。

相続が発生するときまでに贈与財産の時価が上昇することが見込まれる財産であれば、加算される額は、贈与時の価額で固定されるため節税効果が期待できます。

自社の株価や土地の価額の上昇が将来的に見込まれるのであれば、自社株式や土地を相続時精算課税制度の対象とすることで相続税の節約ができる可能性があります。

デメリット

相続時精算課税制度は2500万円までは非課税という、非常に魅力的な制度です。一方で、相続時精算課税制度を適用することによるデメリットが複数あるので注意が必要です。

暦年課税には戻れない

相続時精算課税制度を一度選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ戻ることはできません。

暦年課税に認めれている110万円の非課税枠がなくなることを意味します。トータルで2500万円までは非課税ですが、2500万円を超えた場合は、例えその年の贈与が100万円であったとしても、110万円の非課税枠が使えず、20万円を納税する必要があります。

相続時に贈与対象となった資産がなくとも相続税の課税対象

相続発生時に、贈与の対象となった資産がなくなってしまっていた場合であっても相続財産に加算されてしまいます。資産がないにもかかわらず、相続税の計算に含まれてしまうので注意が必要です。

例:土地を相続時精算課税によって贈与 → 受贈者が当該土地を第三者へ売却

受贈者は土地を第三者へ売却済みですが、贈与者の相続時には相続財産に含めて計算する必要があります。

小規模宅地等の特例の対象外

小規模宅地等の特例は、相続又は遺贈により取得したものが対象です。贈与により取得したものは小規模宅地等の特例に含まれていません。

小規模宅地等の特例を適用することで最大評価額の80%を減額することができます。小規模宅地等の特例による評価額の減額と、相続時精算課税制度の非課税枠2500万円を利用することのメリット・デメリットを十分に検討する必要があります。

孫への贈与は相続税の2割加算

孫は相続時精算課税制度の対象です。祖父母から孫へ相続時精算課税制度により、財産を贈与することは可能です。

しかし、相続税の計算上、孫は祖父母の一等親の血族や配偶者には該当しないため、相続税が2割加算となってしまいます。

他の相続人にバレてしまう

相続時精算課税制度で贈与をした財産は相続財産に加算する必要があります。そのため、他の相続人に内緒で贈与していた場合であっても、相続時にばれてしまうのです。非課税枠につられて、相続時精算課税を利用すると相続時に揉め事が生じる可能性があります。

子供が親よりも先に亡くなると、相続税が2度かかる

相続時精算課税制度により財産の贈与を受けた子供が親よりも先に亡くなると、子供の孫が相続時精算課税制度の納税に係る権利または義務を負います(1度目の相続税)。贈与を受けた資産を相続発生時に所有していれば、相続税の対象です。

その後、親が亡くなった際には孫が相続人となる(2度目の相続税)ことから、2度相続税が課されることになってしまうのです。相続時精算課税制度による精算は親が亡くなった際の相続時に行います。

相続時精算課税制度を選択しなければ、親よりも先に子がなくなった場合は同じ資産に対して1度の課税のみです。

事業承継の場面で利用されるかも

平成30年度の税制改正において、相続時精算課税制度の適用範囲が拡大される予定です。

事業承継税制の適用を受ける場合は、60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者への贈与も、相続時精算課税制度の対象に含まれるようです。

贈与により株式を譲り受けるものが、”推定相続人以外の者”と法令案に記載されており、第三者が後継者の場合にも相続時精算課税制度の適用を拡大すると考えられます。

まとめ

相続時精算課税の非課税枠2500万円は相続財産が魅力的ですが、デメリットも数多くあることがお分かりいただけましたか。

税制にはアメとムチが表裏一体です。メリットがあるときは、それによって享受できなくなるデメリットも検討することをお勧めします。

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愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。【プロフィール】
プロフィール【主な業務内容】
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はじめまして。愛知県名古屋市池下の公認会計士・税理士澤田憲幸です。

起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。

会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。

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