こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
日本税理士会連合会(以下、日税連)が、事業承継の仲介サイトを4月に開設するようです。
仲介サイトであるため、第三者承継であるM&Aを税理士主導で実行しようという趣旨です。
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なぜマッチングサイトなのか?
中小企業の事業承継問題は本当に深刻な状況にあります。
税理士であれば、親族への承継を手伝えばいいのでは?とお思いの方も多いはず。
日税連が全国規模のマッチングサイトを開設しようとしている意図はここにあります。
経営者の高齢化が止まらない
平成29年高齢社会白書によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者人口は27.3%にも達しています。中小企業経営者の高齢化も同様に進んでおり、中小企業経営者の年齢のピークは66歳です。
中小企業庁が公表した事業承継5カ年計画によると、2020年までに約30万人の中小企業経営者が新たに70歳に達し、そのうち6.3万人が75歳に達する予定です。
中小企業経営者の引退年齢は平均で67歳~70歳と言われていることから、2020年までの数年間でさらに多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることが想定されます。つまり、日本の高齢化問題と同様に経営者の高齢化問題も日々進行しているのです。
後継者が不足している
経営者の高齢化とともに、後継者不在が事業承継問題を複雑にしています。
経営者が代替わりを願っても後を継ぐ者がいないのです。
帝国データバンクの調査でも明らかにされており、全国で3社に2社(66.1%)は後継者がいない(未定、未詳を含む)といわれています。
つまり、後継者は外部から募る必要がある
経営者の高齢化と後継者不足が同時発生したため、「身近に会社を継いでくれる人がいない」という状況が全国的に発生しています。
事業承継の手段がない場合は、会社の清算を検討することになりますが、後継者がいないという理由で、優れた技術等のノウハウや、会社の歴史等を終わりにするのは非常に勿体ないです。なぜなら、会社を第三者に引き継ぐことで、会社を存続させることが可能だからです。
親族や身近に会社を引継ぐことができる人がいない場合、事業承継方法はM&A(第三者承継)の手法を取ることになります。会社の株式を後継者へ引き渡すため、法人格や従業員との雇用関係を継続したまま事業承継を完了することができます。
北陸税理士会だけでは、後継者企業に限りがあるため、全国規模でのマッチングサイトを開設することになのだと考えられます。
中小企業庁も事業承継問題に本腰を入れており、今や、事業承継は日本の問題です。
日税連のサイトは、税理士のみしか閲覧できない
日税連が開催する、当該マッチングサイトは税理士のみが閲覧できるようです。
現在、税理士登録者は全国で7万7千人。
全ての税理士が利用することになれば、非常に幅広いマッチングが可能になりますね。
税理士しか閲覧ができないため、税理士が忙しい場合はサイトの閲覧ができず相手探しに難航することが考えられます。
確定申告の時期は多くの税理士事務所が繁忙期です。この時期に依頼されてもおそらく後回しにされてしまうのでは…
北陸税理士会では既に導入済み
北陸税理士会では2017年4月からマッチングサイトの運用がされていました。
北陸税理士会内でのみの運用にも関わらず、1年間弱で数十件の承継が実現したようです。
報酬は?
なんと、日税連のこの仲介システムを利用した場合の利用料は、無料のようです。税理士への顧問料に含まれるとのこと。
一般的に、顧問料には事業承継対策報酬は含まれていないと思います。
日税連のマッチングシステム自体の利用料は無料ですが、アドバイザー報酬に関しては、顧問税理士と別途ご協議くださいということだと思います。さすがに顧問料の範囲内でということにはならないはず。
想定利用者は?
想定利用者は、当然、税理士の顧問先で事業承継に困っている企業ということになります。
日税連のマッチングサイト以外にも、中小企業のM&Aを行っている、民間の仲介会社と公的機関である事業引継ぎ支援センターとの使い分けはどのようになるのでしょうか。
民間の仲介会社は報酬が高額!
仲介会社にM&Aによる相手探しを依頼すると、成功報酬で2000万円近く取られてしまいます。
高い金額で株式を譲渡できれば報酬を支払うことが可能ですが、難しい企業も多いはず。私も、報酬が高すぎるので前職の仲介会社に依頼できないと言われたことが沢山あります。
引継ぎ支援センター
都道府県ごとに事業承継の仲介を行っている事業引継ぎ支援センターがあります。
引継ぎ支援センター内で完結するものもあるようですが、相手が見つからない場合や売手オーナーが希望する場合は、民間の仲介会社を紹介してもらえます。
人気業種以外は、引継ぎ支援センターに持ち込んでも断られるということを稀に耳にするので、検討が必要です。
個人的な印象にはなりますが、引継ぎ支援センターは民間の仲介会社よりも規模が小さい会社が多いような気がします。
日税連マッチングサイト
上の2つを勘案すると、日税連のマッチングサイトに掲載される案件は、民間の仲介会社に依頼するほどの規模がなく、引継ぎ支援センターでも断られてしまうような不人気業種?ということになるのでしょうか。
北陸税理士会で、事業承継が実現した企業の規模感が非常に気になります。
パパママショップ程度の規模では事業承継が問題になることは多くないので、パパママショップ以上、引継ぎ支援センター未満の規模間の会社ということになるのでしょうか。確かにこのレンジが一番企業数は多い気がします。
まとめ:マッチングサイトは素晴らしいが、問題は全ての税理士がM&A積極的なわけではない
日税連が税理士向けにM&Aのマッチングサイトを開設することは、社会的に非常に大きな意義があります。
ただし、全ての税理士がM&Aに詳しいわけではありません。中小企業のM&Aに詳しい税理士であれば、このマッチングサイトを利用かもしれませんが、多くの税理士はM&Aに精通しているわけではない点に注意が必要です。
また、当然ですが、顧問料の範囲でM&A仲介をすることに躊躇いを感じる税理士も多いはずです。
このような理由から、M&Aの仲介は多少の報酬を支払ってでも、その道の専門家に依頼することをお勧めいたします。澤田公認会計士・税理士事務は中小企業M&Aを得意としていますので、後継者不足の経営者様は一度ご相談いただければと思います。
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