こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
経済産業省から、「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」が公表されました。
今回は、株式対価M&Aについてご紹介します。
株式対価M&Aは、会社法上の株式交換(簡単に言えば、ある会社を100%子会社とする組織再編行為)とは違うものです。
平成30年度税制改正大綱の組織再編税制等についてはこちらもご覧ください。
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株式対価M&Aに係る譲渡損益の課税繰延べ
「自社株式を対価とした株式取得による事業再編の円滑化の創設」と経済産業省の資料では題されています。
株式対価M&Aに係る株式譲渡損益を繰延べる措置が講じられるようです。
スキーム図
スキームは株式交換とそっくりです。株式対価M&Aと言っているのだから当然ですが…
(出典:経済産業省 「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」)
現状:自社株式を対価とした買収は困難
売り手、買収会社にとってデメリットや懸念があるため、株式を対価とする買収が進みませんでした。
売り手
対象会社の株主(売り手)が、買収会社の自社株式を対価とする買収に応じた場合、株式交換でない限り、対象会社株式の譲渡益に対して課税されてしまいます。
当該課税の納税資金確保のため、対価として受取った買収会社の株式の一部を売却せざるを得えません。
買収会社
買収後に、売り手が自社の株式を売却することを予め見込むことができ、株価の下落リスクがあります。
改正後:自社株式を対価とした事業再編が円滑化される
買収会社が、事業再編の計画について主務大臣の認定を受けることで、売り手は課税の繰延べが可能になります。
課税が繰延べられることで、納税資金の確保が不要になる→株価が売却される懸念がなくなるという好循環が生まれます。
株式対価M&Aの意義
株式対価M&Aが導入されることで、M&Aの買収機会が拡大し、M&A以外の資金需要にも対応できるようになります。
M&Aの拡大
・買収の容易化。株式が対価であるため、資金に余裕はないが、株式市場で将来の成長が期待されている企業にとってはM&Aによる買収が容易になる。
・銀行からのファイナンスが難しい場合であっても、買収が可能になる
M&A以外の資金需要への対応
・買収資金として社内に現預金をため込む必要がないため、人件費や設備投資等に手元の資金を使うことができる
売り手にとってもメリット
・売り手は、買収会社の株式を保有することになるため、売り手がM&Aによるシナジーを享受でき、M&A後も売り手と買い手協働の企業価値向上が期待できる
事業再編計画の認定
政策的意義の高い、3つの類型の事業活動を行うことにより、新需要を相当程度開拓し、著しい生産性向上を達成する取り組みが認定計画に該当するようです。
対象事業活動のイメージは以下のようです。
1.新市場開拓事業活動
第4次産業革命により飛躍的成長が見込まれる未来投資戦略2017の「戦略5分野(1:移動革命の実現、2:サプライチェーンの次世代化、3:Fin Tech、4:健康寿命の延伸、5:快適なインフラ・まちづくり)」等において、買収によって獲得する革新的な技術等を用いた新事業活動
想定例:自動車部品メーカー、メガベンチャー
2.価値創出基盤機構事業活動
買収により獲得した経営資源を活用し、幅広い事業分野の事業者に必要不可欠なものとして利用される商品又は役務を販売・提供する新事業活動
想定例:プラットフォーマー
3.中核的事業強化事業活動
買収による事業ポートフォリオの転換を図る新事業活動
想定例:多角化している大企業、大規模業界再編を行う企業等
まとめ
株式対価M&Aが導入されることで、よりM&A市場が活発になることを願っています。
しかし、買収対価として株式を受取ることを喜ぶ株主はどの程度いるのかが疑問です。
当該制度は当然のように上場企業が買収会社であることが想定されていますが、株よりも現金、仮想通貨で対価を受取りたいという人も多いのではないかと…
少なくとも中小企業の経営者は株よりも現金がいいと言っているケースが多いです。
愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・スポット対応
・個別コンサルティング業務
◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。
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