こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
コロナ禍の制度融資をきっかけに、借入金が何本もあるという会社がずいぶん増えました。信用金庫から3本、銀行から1本、日本政策金融公庫から1本……というのも珍しくありません。
借入が増えると、経理の現場で地味に困るのが借入金の残高管理です。今回は、私が顧問先の月次業務で毎月必ず確認している「借入金の残高チェック」について、よくある間違いと確認の方法をご紹介します。
借入金の残高がずれる3つのパターン
借入金の残高が返済予定表と合わなくなる原因は、だいたい次の3つに分けられます。
① 補助科目の取り違え
一番多いのがこれです。会計ソフトでは、借入金を借入ごとに補助科目で分けて管理するのが一般的です。ところが、同じ金融機関から同じ時期に借りていると、毎月の元金がよく似た金額になります。
たとえば、元金59,500円の借入と59,600円の借入が同じ日に引き落とされる、というケースが実際にありました。通帳の上では引落額に利息が足されているので、ぱっと見ではどちらの返済なのか見分けがつきません。ここで補助科目を取り違えると、借入金の合計は合っているのに、借入ごとの残高がずれていきます。
合計が合っているので、決算まで誰も気づかない。そして決算のときに金融機関の残高証明書と突き合わせて、ようやく発覚する。これはかなりよくあるパターンです。
② 元金と利息の分け間違い
毎月の返済額は「元金+利息」です。元金は借入金の減少、利息は支払利息という費用になります。この分け方を間違えると、借入金の残高も、損益も両方ずれてしまいます。
特に注意したいのが、利息の金額が毎月変わる借入です。残高に応じて利息が計算されるので、先月と同じ金額で仕訳を入れてしまうと、少しずつずれていきます。また、自治体の利子補給がある制度融資では、いったん利息を支払ったあとに補給分が入金されることもあり、処理が少し複雑になります。
③ 元金と利息が別の伝票になっている
金融機関によっては、元金と利息が別々に引き落とされることがあります。この場合、会計ソフトでも別々の仕訳になります。
実はこれ、確認する側が間違えやすいポイントでもあります。元金の仕訳だけを見て「利息が計上されていない」と思ってしまうのですが、よく探すと別の伝票で利息がきちんと計上されている、ということがあります。私自身も、指摘する前に条件を変えてもう一度探す、ということを徹底するようにしています。
毎月の確認は3つ
では、どうやって確認するか。私が月次で見ているのは、次の3つです。
確認1:引落額=元金+利息になっているか
通帳の引落額と、仕訳の元金と利息の合計が一致しているかを見ます。当たり前のようですが、ここがずれているときは仕訳の入力ミスか、手数料などほかの費用が混ざっている可能性があります。
確認2:補助科目と元金の組み合わせが正しいか
借入ごとに「毎月の元金」「返済日」「引落口座」を一覧表にしておき、仕訳と照らし合わせます。私たちの顧問先では、手順書に次のような表を作っています。
| 借入(補助科目) | 元金/回 | 返済日 | 引落口座 |
|---|---|---|---|
| A信金① | 59,600円 | 毎月10日 | A信金 |
| A信金② | 59,500円 | 毎月10日 | A信金 |
| A信金③ | 60,000円 | 毎月20日 | A信金 |
| B銀行 | 84,000円 | 毎月20日前後 | B銀行 |
(金額は例です)
こうしておくと、「10日に引き落とされる59,500円はA信金②」と迷わず判断できます。返済日が違えば見分けやすいのですが、同じ日に似た金額が並ぶときは、この表が頼りになります。
確認3:補助科目ごとの残高が予定表どおりに減っているか
最後に、試算表で補助科目ごとの残高を出し、返済予定表の残高と比べます。ここが一致していれば、その月の借入金はOKです。ずれていれば、どの月から合わなくなったのかをさかのぼって探します。
毎月確認していれば、ずれていても原因は直近1か月の中にあります。1年分さかのぼって探すのに比べると、手間はまったく違います。
返済予定表は「最新版」を手元に
確認の前提として、返済予定表を手元に置いておくことが大切です。ところが、意外と「どこにあるかわからない」という会社が多いです。金融機関から紙で受け取ったまま、どこかのファイルに綴じてある、というケースですね。
私たちの顧問先では、返済予定表をPDFにしてGoogleドライブの決まったフォルダに保存していただいています。借換えや条件変更をしたときは、新しい予定表に差し替えてもらいます。最終回だけ金額が違う借入もあるので、最後まで目を通しておくと安心です。
借入金の残高が正しいと、資金繰りの相談がしやすい
借入金の残高が借入ごとに正しく管理されていると、資金繰りの相談がぐっとしやすくなります。「この借入はあと何年で終わるのか」「来年の返済額はいくら減るのか」「借換えをしたほうがいいのか」といったことを、すぐに試算できるからです。
金融機関との面談でも、借入ごとの残高と返済状況をきちんと説明できる会社は、それだけで信頼されます。経理の数字が整っていることは、融資を受けやすくすることにもつながります。
まとめ
- 借入が複数あると、補助科目の取り違えや元金・利息の分け間違いが起きやすい
- 確認するのは「引落額=元金+利息」「補助科目と元金の組み合わせ」「補助科目ごとの残高」の3つ
- 借入ごとの一覧表と、最新の返済予定表を用意しておく
- 毎月確認すれば、ずれても原因はすぐ見つかる
借入金の確認は地味な作業ですが、私はこういう「合っているはずの数字を、本当に合っているか確かめる」作業がけっこう好きです。合っていないところを見つけて、原因をたどって、直して、ピタッと合ったときは小さな達成感があります。
毎月の経理全体の流れについては、『経理代行の「月次業務」では何をしているのか?数字が1円まで合うまでの流れ』の記事で紹介しています。あわせてご覧いただければ幸いです。
「借入が増えて管理しきれていない」「試算表の借入金が予定表と合っているか自信がない」という方は、一度ご相談いただければ幸いです。月次の経理代行から、決算・申告まで一貫してサポートしています。
