こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
2018年の終わりもすぐそこまでやってきています。
2018年の節税対策は当然2018年中に行わないといけません!あと数日あるので、まだやり残した節税がある方は今からでも遅くないので、取り掛かりましょう。
今日はそんな節税ができるかも!うししし、というお話を耳にしたので検証です。
タイトルにもある通り、事業用の車を売却して損が出た!この損は事業の収益と相殺できるの??
といった、旬な質問をフリーランス/個人事業主の方からいただいたので検討してみます。以下は100%事業用の車両を前提にお話を進めます。
車の売却損益は、◎譲渡所得、×事業所得
まず、個人事業主の方が車両を売却した場合は、事業所得ではなく、譲渡所得として計算されます。
減価償却費は、事業所得に計上して経費にできるのに、売却損益は譲渡所得として計算するのです。不思議ですが、そうなのです。
譲渡所得の枠組みの中で、売却益がでれば売却益に対して課税され、売却損が出れば譲渡所得の売却損として取り扱われます。
譲渡所得も損益通算の対象
個人事業主の所得計算には、損益通算というものが存在します。
損益通算とは、1)不動産所得、2)事業所得、3)譲渡所得、4)山林所得の所得計算の計算において、損失が生じた場合に、他の所得に当該損失をぶつけることができる制度です。
譲渡所得により損失が計上された場合も、損益通算の対象となっていますので、事業用の自動車を売却した場合に損失が出た場合も、他の所得に当該損失をぶつけることができそうです。
譲渡所得の計算
念のため、譲渡所得の計算式を確認してみます。
*1:50万円は譲渡益が出ている場合に譲渡益から最大50万円が控除してもらえる制度です。損失の場合は当該50万円を利用することはできません。
*2:取得費は、購入代金のことを一般的に差しますが、使用期間により減価する資産は減価償却費相当額を控除した後の金額です。
車は減価償却の対象
質問してきたフリーランスの方は、次のように言っていました。
「車の購入価額が160万円で、今回120万円で売却できたから差額の40万円の損を事業所得とぶつけたいなぁ。」
一見、購入価額と売却価額の差額が40万円もあるので、損しているように見えますが、ここにトラップがあります。
減価償却という罠
普段生活する範囲内であれば、160万円で買ったものが120万円で売却できたから、40万円の損だなぁ。これで特別問題ありません。
ただし、税金計算や会計の話をするのであれば、この思考はちょっとまずい。
何がまずいのかというと、減価償却という概念がすっぽりと抜け落ちてしまっていること。
譲渡所得の計算式にも記載した通り、取得価額から減価償却費を控除したものを取得費とする必要があります。
自動車の耐用年数は4年と長くない
よくよくヒアリングしてみると、この自動車は「5年近く」乗っていたようです。
一般的な自動車の耐用年数が4年です。
1年あたりの減価償却費の計算は次のようになります。
5年後には、車の取得費はゼロです。
譲渡所得を計算してみると、驚きの結果になる
車の取得費がわかったので、次は譲渡所得の計算です。
先ほどの、譲渡所得の計算式に当てはめてみます。
あれ?特別控除の50万円を考慮した後であっても、70万円の譲渡益(譲渡所得)が出現してしまいました。
減価償却という概念を失念しているために、損失ではなく、売却益が出現してしまいました。
当然、売却益がであれば課税の対象です。損失を事業所得と相殺しようとしていた当初の思惑とは真逆の結果になってしまいました。
まとめ
車の売却をして損が出た!これを事業所得と相殺だ!と考えている方は、本当に損が出ているのか、税務的に正しい処理なのかをしっかりと確認することをお勧めします。
事業用の車両の売却損であれば、損益通算が可能です。ただし、今回のケースのように、自分の中では損失がでた!と勝手に思っていただけで本当は売却益が発生、予想以上に税金の負担が大きいな…ということもありえます。
車輛の売却損益は、税金計算に与えるインパクトが小さくありません。計算方法がわからない場合は、一度税理士に相談することをお勧めいたします。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・個別コンサルティング業務
公認会計士・税理士澤田憲幸に問い合わせしてみる
起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
澤田公認会計士・税理士事務所が貴社のブレインとなって全面的にサポートさせていただきます。