こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
11月29日に、国税庁は2018年6月までの1年間に実施した税務調査の結果(平成29事務事業年度における所得税及び消費税調査等の状況について)を公表しました。
今回は所得税についてご紹介いたします。
調査の件数は62万件!
調査等の件数は62万3000件も行われていたようです。前事業年度は64万7000件であったため、前年に比べると減少傾向にありますが、それでも多いですよね。
調査等の種類は複数ある
所得税の調査には、高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に、深度ある実地調査を行う「特別調査・一般調査」と、実地調査を行うものの、短期間で行う着眼調査があります。
この他に、文書、電話等による面接による申告漏れ、計算誤り等の申告を是正するための接触である「簡易な接触」があります。
申告漏れは50%以上!
特別調査・一般調査が5万件、着眼調査の件数が2万3000件、簡易な接触が55万件でした。
この合計で62万3000件です。
この62万3000件のうち、申告漏れ等の指摘事項があった件数は38万4000件です。
つまり、税務調査の対象となった方の、50%以上が、何かしらの非違事項があったということになります。
申告漏れ所得金額と追徴税額
税務調査により申告漏れであった所得の合計は9038億円にもなります(税額にすると1196億円)。
実地調査による申告漏れ所得金額は、5894億円。
このうち、特別調査・一般調査によるものは5080億円(税額は887億円)、着眼調査は814億円(税額は60億円)です。
簡易な接触による申告漏れ所得金額は3143億円(税額は249億円)
申告漏れ金額が上位な業種:キャバクラや不動産
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額の上位10業種は次の通りです。
1.キャバクラ:追徴税額834万円(申告漏れ所得金額2897万円)
2.風俗業:追徴税額443万円(申告漏れ所得金額1974万円)
3.不動産代理仲介:追徴税額478万円(申告漏れ所得金額1774万円)
4.システムエンジニア:追徴税額176万円(申告漏れ所得金額1774万円)
5.機械工具、部品修理:追徴税額230万円(申告漏れ所得金額1357万円)
6.焼肉:追徴税額332万円(申告漏れ所得金額1356万円)
7.冷暖房設備工事:追徴税額237万円(申告漏れ所得金額1254万円)
8.人材派遣:追徴税額263万円(申告漏れ所得金額1246万円)
9.バー:追徴税額249万円(申告漏れ所得金額1245万円)
10.ダンプ運送:追徴税額174万円(申告漏れ所得金額1233万円)
このような業種が昨年度は税務調査の現場では人気だったようです。
業種を見れば、まぁそんな感じだろうなっていう業種が少なくないような気がします。
システムエンジニアは申告漏れ所得金額が大きめですが、大きなプロジェクトを受託して外注に出すようなサイズ感のシステムエンジニアを指しているのか?
昨年はプログラマーが3位にランクインしていました。
この点からすれば、この業種は”まじめに”事業を運営して、”まじめに”税金を納めていたとしてお、その他の業種に比べると税務調査に入られる可能性が高いと考えられます。
なぜなら、業界として、たたけば埃がでてくる可能性が高いからです。
海外投資等を行っている個人・富裕層への調査も増加中
海外投資を行っている個人や富裕層への調査についても取り上げられています。
海外投資等を行っている個人の調査状況
経済の国際化に伴い、海外投資や海外資産を保有している個人に対しても、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度等を活用し、国税庁は積極的に調査を行うようです。
実際に、特別・一般調査の件数は4616件であり、前年の3145件から大幅に増加しています。
所得漏れ金額も2116万円と、事業所得で申告漏れが多い、キャバクラや風俗業と同じレベルの所得漏れが発見されています。
また、所得金額の合計額も977億円(前年は541億円)にもなるようです。
金額の大きいことを国税庁も把握しているため、今後も海外投資等を行っている個人に対する税務調査は減ることはないと考えられます。
富裕層への対応
有価証券・不動産等の大口所有者や所得が経常的に高額な個人といったいわゆる「富裕層」に対しては、資産の多様化や先ほどの海外投資等が増加している点を念頭に調査を行っています。
特別調査・一般調査等の実地調査(特別・一般)件数は、5219件であり、追徴税額は総額で177億円でした。
特徴的なのが、富裕層なだけあり、1件当たりの追徴税額が大きく、339万円である点です。これは所得税の実地調査全体の1件当たりの追徴税額178万円の約2倍です。
この中でも、海外投資等を行っている富裕層は、1件当たりの追徴税額が827万円です。先ほどの339万円の2倍以上!
無申告者にも税務調査はやってくる!
確定申告をするから税務調査に入られるんでしょ?と謎の発言をする方がいらっしゃいます。
これはわけがわかりません。実際、無申告の方にも税務調査はあります。
今回公表された調査状況においても「無申告者に対する調査状況」が掲載されています。
無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不
公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。
こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして
的確な課税処理に努めています。平成30事務年度においても実地調査のみなら
ず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施します。
適正に申告している人が税金を納めている一方で、無申告の人が税金を納めないで生活しているというのは間違っています。
明らかに不公平であるため、無申告者に対する調査が今後増加することを私は期待しております。
ちなみに、追徴税額総額は207億円です。調査の結果追徴が可能になったのであり、調査に入られていない無申告者が「かなりの数」いるのではないでしょうか。
無申告疑惑者に対しては、よりペナルティを課すなどの方法で、1人でも日本から無申告者がいなくなるといいなと思います。
インターネット取引も調査の対象
海外等の投資、富裕層、無申告者に続き、インターネット取引を行っている個人についても積極的に税務調査を行っていくようです。
インターネット取引として以下のような取引が例示されています。
1.ネット通販・・・事業主が商品を販売するためのホームページを開設し、消費者から直接受注する販売方法(オンラインショッピング)による取引
2.コンテンツ配信・・・インターネットを利用して行われる電子化された音楽、静止画、動画、書籍、情報等のダウンロード取引又は配信提供に係る取引
3.ネットオークション・・・インターネットを利用して行われるオークション取引
4.ネット広告・・・ホームページ、電子メール、検索エンジンの検索結果画面等を利用して行われる広告関連取引
5.ネットトレード・・・インターネットを利用して行われる株、商品先物又は外国為替等の取引
6.その他のネット取引・・・出会い系サイトの運営など、1~5に該当しない取引
インターネットで収益を得ている人の中には、税金に対するコンプライアンス意識が低い人が見受けられます。
・ネット取引だからばれないんじゃないか?
・税務署にバレようがないし、申告しなくていいですよね?
このように考えている場合は危険です。税務署もインターネット取引から生じる所得については目を光らせています。
仮想通貨も、国内の取引所を経由している場合には、そこから海外取引所の存在がばれてしまったという相談もありました。
どこからバレるかわかりませんし、彼らは調査のプロです。
素人が多分ダイジョブウだろうと思っていても、それは甘いと考えたほうがいいです。ということなので、適正に申告するようにしましょう。
まとめ
税務調査の結果を眺めてみると、気になる点がでてきます。
インターネット取引を活発に行っている会社は税務調査のリスクが高いなとか、業種によりやっぱりあるよな~とか、富裕層はやはり追徴税額も富裕層だなぁとか。
税務調査の連絡があると、殆どの方が落ち着かなくなるとおっしゃっています。
適正に申告している方でさえ、ソワソワし始めるのが税務調査です。
税理士と相談しながら日々の処理を行うことで税務調査の不安やソワソワ感の軽減が可能です。税務調査で不安な日々をお過ごしの方は一度ご連絡ください。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・個別コンサルティング業務
公認会計士・税理士澤田憲幸に問い合わせしてみる
起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
澤田公認会計士・税理士事務所が貴社のブレインとなって全面的にサポートさせていただきます。