こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
前回、前々回は、不動産投資を個人を行う際の税金と、所得税・相続税が年々増加していく要因をご紹介したしました。
今回は、所得税と経費の関連性についてご紹介いたします。
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所得税と経費は密接な関係性
個人事業主やフリーランス、会社の社長は経費をたくさん使えてうらやましいなぁと思ったことはありませんか。しかも、経費として計上することで税金が安くなるらしい。
所得税の計算方法は次の算式で計算されることから、経費を使うと税金が安くなると巷では言われているのです。
家賃収入から必要経費をマイナスすることから所得税の計算は始まります。必要経費の金額が大きくなればそれだけ所得税額が減少する関係にあることがわかります。
せっかくの機会なので、所得税の計算式の構成要素を上から順番に確認してみます。
家賃収入
不動産オーナーの場合は、家賃収入が売上に相当するものになります。
家賃収入以外にも収入に含めるべきものは次のようなものがあります。
- 名義書換料、承諾料、更新料又は頭金などの名目で受領するもの
- 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
- 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など
ちなみに家賃が回収できなくても売上計上する必要がある点は注意が必要です。
空室の場合、誰にも不動産を貸していないことから賃料収入がそもそもありません。一方、家賃の滞納の場合、不動産を貸し付けているため売上自体は計上する必要があるのです。
空室も厄介ですが、家賃の滞納は所得税を構成するためさらに厄介です。不動産を貸す相手をしっかりと見極める必要があるのです。とはいえ、家賃の滞納を確信犯的に行う人は多くないはず。この点は、家賃保証会社に保証料を支払うことで滞納リスクはヘッジできます。
不動産を貸付けにより対価を得るものは所得税法上「不動産所得」という区分に分類されます。
余談ですが所得区分は10種類に分けれられ、所得区分により税率や課税方法が異なります。
1.給与所得
2.事業所得
3.不動産所得
4.配当所得
5.利子所得
6.退職所得
7.山林所得
8.譲渡所得
9.一時所得
10.雑所得
必要経費
必要経費。。。これはどのようなものをいうのでしょうか。念のため、所得税法第26条第2項を見てみると、次のように記載されています。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。(所得税法第26条②)
条文上は、必要経費を控除した金額とするとだけ記載されています。
これではよくわかりませんが、国税庁のHPには以下のように記載があります。
必要経費とすることができるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるものであり、主なものとして貸付資産に係る次に掲げるものがあります。
イ 固定資産税
ロ 損害保険料
ハ 減価償却費
ニ 修繕費出典:国税庁HP
不動産収入を得るために直接必要な費用で、家事上の経費と明確に区分できるものと国税庁のHPに記載されています。
となると、不動産賃貸業に限ると、経費計上可能なものはそれほど多くなさそうです。
経費計上できそうなもの
不動産の修繕費(一定のルールがあります。無条件で全額経費計上できるわけではありません)、管理費、支払利息等は経費にできそうです。
追加では、新たな投資物件の調査、不動産投資に関する書籍代、セミナー代等といったところでしょうか。
自宅家賃、携帯代、水道電気代、インターネット代、PC代等をプライベートと混合して利用しているのであれば、不動産の賃貸事業に要する部分のみを経費として計上が可能です。
例えば、1週間7日のうち、2日は不動産賃貸業に費やしているのであれば、全体の2/7が経費計上することができます。
何もしていないのに全額経費計上することは認められないので、全体の何割を不動産賃貸業として利用しているのか、合理的に説明できるような準備が必要となります。
よくある質問:キャバクラ等の接待交際費は?
キャバクラの費用は経費として落とせる?と質問を受けますが、時と場合によるというのが回答です。
空室を埋めるため、不動産仲介会社を接待した等の不動産収入を得るための努力であれば、経費として計上できる余地は多分にあります。ただし、その事実が客観的にわかる資料を作成しておく必要があります。当然、同僚とキャバクラにいった際の費用は経費にはなりません。
NGな経費計上例
噂で聞いた話では、賃貸用不動産を購入し、貸出用の不動産にテレビを備付けたことにし、そのテレビを自宅で私的に使っている人がいるようです。当然このような支出は経費として計上できません。
最悪、重加算税の対象で、最大40%のペナルティを支払う羽目になります。
所得控除
所得控除とは、(家賃収入 – 必要経費)の金額からさらに控除ができるもののことを指します。所得税を計算する際に、個人的事情も所得税の計算上考慮してあげましょうというのが立法趣旨のようです。
具体的には、以下の14個あります。代表的なもののみ説明させていただきます。
1.雑損控除:
災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等に受けることができる控除です。
2.医療費控除:
医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。
3.社会保険料控除:
社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。
4.小規模企業共済等掛金控除:
納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合には、その掛金の所得控除が受けられます。個人型年金401K もこれに該当します。
不動産収入が多額にある場合は、この個人型年金制度への加入を検討することをお勧めします。
5.生命保険料控除:
生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。
個人の場合、支払った保険料の金額がどれだけ多くても最大12万円までしか生命保険料控除を受けることができません。
6.地震保険料控除:
特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に一定金額の所得控除を受けることができる制度です。
7.寄附金控除:
納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます。
ふるさと納税も寄附金控除に含まれます。所得が大きくなればなるほどふるさと納税の枠は大きくなるので活用しない手はありません。
8.障害者控除:
納税者自身、同一生計配偶者(注)又は扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを障害者控除といいます。なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族にも適用されます。
9.寡婦(寡夫)控除:
納税者自身が一般の寡婦であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを寡婦控除といいます。
10.勤労学生控除:
納税者自身が勤労学生であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを勤労学生控除といいます。
11.配偶者控除:
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを配偶者控除といいます。
12.配偶者特別控除:
配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。これを配偶者特別控除といいます。なお、配偶者特別控除は夫婦の間で互いに受けることはできません。
13.扶養控除:
所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。
14.基礎控除:
基礎控除は、ほかの所得控除のように一定の要件に該当する場合に控除するというものではなく、一律に適用されます。基礎控除の金額は38万円です。
税率・控除額
所得税の税率と、控除額は以下の表のとおりです(平成29年4月1日時点の法令)。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得が増えれば増えるほど税率が高くなっていくことが一目瞭然です。
税額控除
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて計算した所得税額から一定の金額を控除することができるものです。
税額控除で有名なものは、住宅ローン控除です。
居住用の住宅ローン残高の一定額を税額から控除してもらえるものです。
まとめ
所得税の計算方法と経費の関係についてコメントさせていただきました。所得控除、税額控除は自分に適用があるものを適切に把握することができれば適用を受けることができます。
不動産賃貸業のポイントは、必要経費に計上できるものの範囲です。
税理士であれば、グレーな経費を経費計上できるわけではありませんが、多くの経験に基づいたアドバイスが可能です。
不動産投資には税理士の力が不可欠なことを理解された方、顧問の税理士がいたほうが安心するという方は、澤田公認会計士・税理士事務所までご連絡ください。
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