こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
前回は、不動産の購入時から売却時に課される税金についてご紹介しました。
実はこの税金、年々と増加していくのをご存知でしょうか。
所得税と相続税は年々増加していく
不動産賃貸業を営んでいる場合、所得税と相続税が時の経過ととも増加していく仕組みになっています。
なぜ、所得税と相続税は年々増加していくのか、その理由を解明してみます。
所得税が年々増加していく理由
所得税が増加する理由は、家賃収入が一定とすると、経費の減少によるものです。アパートの空室率が目立つ(家賃収入の低下)と言われているにもかかわらず、所得税が増加していくケースがあるのです。
家賃収入の低下以上に、経費計上できるものがなくなるということです。
経費減少の代表的なものには次のようなものがあります。
減価償却費の減少
建物を購入した場合、購入年度に一括費用計上するのではありません。
時の経過とともに一定額ずつ経費にしていきます(これを減価償却と呼んでいます)。
一般的に、建物の耐用年数は22年です(新築木造の場合)、建物附属設備の耐用年数が15年です。つまり、15年目を過ぎた段階で、建物附属設備の減価償却費が、22年を過ぎた時点で建物の減価償却費の計上が終了するということです。
16年目から所得が一段階増加し、23年目からは更にもう一段階所得が増加するのです。
建物や建物附属設備の金額は他の諸経費に比べると非常に高額であり、それが所得増加に大きな影響を与えることになります。
例:建物と建物附属設備を新築で購入した場合の減価償却費の概算
建物:22,000千円、耐用年数22年
建物附属設備:15,000千円、耐用年数15年
【減価償却費】
建物:1,000千円(=22,000千円÷22年)
建物附属設備:1,000千円(=15,000千円÷15年)
0~15年 | 16年~22年 | 23年目~ | |
建物 | 1,000 | 1,000 | - |
建物附属設備 | 1,000 | - | - |
減価償却費合計 | 2,000 | 1,000 | - |
上の通り、減価償却費が15年目と16年目で1,000千円、22年目と23年目で1,000千円減少することがわかります。
本ケースでは建物と建物附属設備の合計が37,000千円という、さほど大きくない金額で計算しましたが、1,000千円単位で経費に与えるインパクトです。
減価償却の威力をご理解いただけたでしょうか。
支払利息の減少
不動産購入時には金融機関等からの借入を起こして不動産を購入するケースが多いと思います。借入金の利息は借入金を返済するにつれ、支払う利息も減少していきます。
この支払利息の減少が、所得の増加要因の一つとして挙げられます。
とはいえ、近年は稀に見る超低金利状態が続いています。金利が1%等では、支払利息が所得に与える影響額は減価償却の終了に比べれば大きくありません。
相続税も年々増加していく理由
支払利息の額が時の経過とともに減少していく原因の1つに借入金の減少がありました。
相続税の観点からすると、借入金の減少は相続財産の増加につながります。
相続財産が増加する?
相続税の課税対象は、ざっくりいえば以下で計算されます。
このような計算式になるため、土地の価額が一定であれば借入金を返済すればするほど、相続税の課税対象となる価額が増加していくことになるのです。
借入金が減ることは喜ばしいことですが、相続を見据えたタックスプランニングの観点からは手放しに喜べないのです。
それは相続税の税率も要因となっています。
相続税も累進税率
所得税と同様、相続税の税率も相続財産に応じて増加する累進税率が採用されています。
簡単に言えば、相続財産をたくさん保有している人ほど、高い税率が課されます。
相続税も相続財産の価額により税率が変動しますので、借入金という債務を返済することで、相続税額が増加していきます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税率は最大で55%です。これは、借入金を1000万円返済すると、相続税の対象財産が1000万円増加し、相続税が最大550万円増加することを意味しています。
これが、借入金を返済すれば、それだけ相続税が増加する所以です。
まとめ
個人の不動産オーナーは不動産保有中、ほぼ毎月税金を納付するはめになると前回の記事でお伝えしました。
毎月、毎年の税負担を減少させることは非常に重要ですが、不動産投資では相続を見据えたタックスプランニングを不可欠だということです。節税は非常に重要ですが、木を見て森を見ずの状態にならないよう、将来のことを検討することが不動産投資にも求められています。
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