こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
中小企業のM&Aは、「株式譲渡」による買収が一般的です。
買い手企業は売り手企業の決算書を精査し、買収価額を決定すると思います。この時に、決算書(特に貸借対照表)に記載されていない項目(オフバランス項目)のチェックが非常に重要です。
買収希望企業がチェックすべきオフバランス項目についてご紹介します。
チェックすべきオフバランス9項目
買収希望企業つまり買い手企業がチェックすべき代表的なオフバランス項目は以下の9つです。
- 未払残業代
- 未払社会保険料
- 退職金の積立不足
- CoC
- 保証債務
- 訴訟や損害賠償請求
- 土壌汚染
- 行政処分
- リコール
1.未払残業代
電通やクロネコヤマトでも残業代が支払われていないとニュースになっていました。企業が従業員に残業をさせた場合は、残業代を支払う義務があります。
M&A後に未払残業代を従業員から請求される可能性はゼロではありません。1人の従業員から請求されるということは、従業員全員から請求されるリスクがあります。
未払残業代の事項は通常2年間とされています。
残業が恒常的に発生している会社では未払残業代が与える影響は見過ごすことができません。
2.未払社会保険料
株式会社をはじめとする法人は、規模や業種を問わず社会保険の強制適用の事務所です。
法人に正社員として雇用されている従業員は社会保険に加入してるはずですが、稀に社会保険に加入していないケースがあります。
未払社会保険は最大2年間遡って納付する必要があります。
社会保険料は給与の約14%~15%です。
2年分遡って負担することになると売り手企業の貸借対照表と損益計算書に大きなインパクトがあります。
3.退職金の積立不足
賃金規定や退職金規定に従業員が退職する際は退職金を支払うと規定してある場合は、退職金を支給しなければなりません。
買収時点で退職金の積立額が不足していれば、不足分を買収価額から減額することを検討する必要があります。
4.CoC (チェンジ・オブ・コントロール)条項
売り手企業が取引先と締結している、取引基本契約書、金銭消費貸借契約書等の重要な契約書において、株主の変更、代表取締役の変更等の重要な事項が生じた場合、事前に相手方に通知または承諾を得る必要があると契約書に記載されているケースがあります。
買い手企業は売り手企業の取引先、商流、物流を含めて買収を検討しています。CoC条項により相手方の承諾を得られない場合、商売の根幹を揺るがすことになりかねません。
メインの取引先との契約がCoC条項にひっかかる場合は、M&A自体をストップせざるを得ないケースもあり注意が必要です。
なお、「事前に承諾」が必要なパターンでは、承諾を得るまでに1年程度の時間を要した事例もあります。自動車業界に多いです。
5.保証債務
売り手企業の関連会社、友人の会社、経営者の債務保証を売り手企業がしているケースが稀にあります。
本来の債務者が債務不履行となってしまった場合には、売り手企業に債務履行義務が生じます。
関連会社を含めた他社等の債務保証をしていないかの確認は重要なポイントの1つです。
6.訴訟や損害賠償請求
売り手企業を被告として、既に訴訟が提起されている、今後訴訟に発展する可能性が高い状況である、損害賠償請求を受けている等の場合、売り手企業が訴訟や損害賠償による損失を負担する必要が生じます。
訴訟や損害賠償請求を受けているのであれば、当該訴訟及び損害賠償請求に対応する労力・手間・費用を含めて、売り手企業が負債要因です。
訴訟の種類によっては、売り手企業の事業継続が困難になるリスクも秘めているので念入りな検討が必要です。
7.土壌汚染
クリーニング業、メッキ業、塗装業は土壌汚染リスクが高いです。
土壌汚染が判明した場合、莫大な土壌汚染処理費用がかかります(土を入れ替える必要があるため)。
売り手企業の敷地内だけではなく、溶剤が近隣の土地まで汚染しているケースも数多くあります。土壌汚染の懸念がある業種においては、土壌汚染チェックをしたうえで買収するのか等の追加の検討事項が必要になります。
8.行政処分
行政処分とは、税務調査をはじめとする規制当局からの指導のことです。
税務調査により最大7年分の税金+付帯税を支払う必要が生じます。
最近では、アディーレ法律事務所が、「今だけ無料」CMを繰り返し、景品表示法違反の行政処分を受けています。
行政処分の内容によっては一定期間業務停止となるので検討が必要です。
9.リコール
タカタはリコールが事の発端となり、民事再生手続きを開始しました。
会社を民事再生にまで追い込む威力をもつのが、リコールです。
リコールとは、欠陥製品を生産者が公表して、製品をいったん回収し無料で修理することです。当然ですが、会社には一円の利益も生みません。新たな部品や人件費が嵩むだけです。
リコールは金銭的なコストだけではなく、ブランド価値の既存にもつながるため、リコールの有無及びリコールの兆候がないかをヒアリングし、売主に表明保証させることが重要です。
愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・スポット対応
・個別コンサルティング業務
◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。
このような方がコスト重視プランの対象です
・毎日忙しく、税理士と面談する時間がない
・直接会って面談するよりも、メールやチャットで気軽に質問できるほうが望ましい
・別に税理士には会わなくていいので安くしてほしい
といった要望にお応えし、コスト重視プランを始めました。
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起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
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