こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
中小企業M&Aのマーケットが拡大しています。後継者がいない経営者にとってはM&Aによる事業承継は他人ごとではありません。
今回は、M&Aで相手の見つかりやすい会社と見つかりにくい会社についてご紹介させていただきます。
相手の見つかりやすい(売りやすい)会社
相手が見つかりやすい会社は以下に該当する項目が多い会社です。買い手側の心境になって考えれば至極当然の条件ばかりです。
1. 実態収益力が黒字であること
2. 許認可業または業態がいわゆる人気業種
3. 借入金が営業利益から弁済可能であること
4. 真面目に経営していること
5. 経営権が従業員へ移譲されている
6. 取引先が分散している
1. 実態収益力が黒字であること
実態収益力が黒字であることとは、決算書(損益計算書)上は赤字であっても、決算書を詳細に検証すると、その会社は真の収益力が黒字である場合のことをいいます。
中小企業では税金対策のため節税保険を活用することや、役員報酬を多額にとっていることが多いです。
M&A実務では、売却希望企業の損益計算書を詳細に検証および修正し、会社の本来の収益力を計算します。これが黒字であり、収益力が高ければ高いほど売れやすい会社と言われています。
2. 許認可業または業態がいわゆる人気業種
許認可業種や人気業種も相手が見つかりやすい業種と言われています。許認可の取得には時間がかかること、スケールメリットが出しやすいことが人気の理由として挙げられます。
◇調剤薬局:薬剤師不足及びスケールメリットが出しやすい
◇ビルメンテナンス会社:一度契約したら滅多に変更することはない
◇運送業:輸送用トラックの生産が追いついておらず、新車を購入するのに1年待つ必要があり、どの会社も人口減少による人材不足に悩みを抱えている
◇酒造:酒の許認可を取得するのは難しい
3.借入金が営業利益から弁済可能であること
営業利益が十分に出ていれば、借入金の返済原資は営業利益から創出できるはずです。営業利益からは返済不可能なほど借入金が多い会社は財務内容が厳しいことが予想されます。
4.真面目に経営していること
会社の経営を真面目にしている誠実性を伝えることができれば、買い手企業の心象も非常によくなります。M&Aというとドライな印象を持つ方がいますが、そうではありません。
経営者同士の印象および相性が良くなければ、中小企業M&Aの成約は難しいです。
売り手社長はこの相手であれば会社を譲り渡してもよいと決定するのです。そこには買い手企業の格もあるかもしれませんが、両社の相性も非常に重要なキーファクターです。
5.経営権が従業員等へ移譲されている
意外に思われるかもしれませんが、いわゆるワンマンオーナー会社ではない会社のほうが相手を見つけやすいです。
前経営者への依存が大きいと、M&A後も全経営者に依存してしまう可能性があるためです。
ある程度経営権が移譲されており、経営者の色がついていない会社のほうがM&A後の更なる成長を見込むことが可能と言われています。
6.取引先が分散している
取引先は分散しているほうが望ましいです。
数社に集中していると、値下げの影響を受けやすい、連鎖倒産のリスク等があります。
一社集中ではなく、できるだけ多くの会社と取引をしている方が望ましいです。
見つかりにくい(売りにくい)会社
相手の見つかりにくい(売りにくい)会社は、見つかりやすい(売りやすい)会社の反対パターンです。
1. 継続的に赤字、債務超過
2. 借入金が重たい
3. 多額の簿外負債の存在
4. 労働組合の存在
5. 粉飾している
6. 会社とプライベートが公私混同している
7. 一社集中取引
多額の簿外負債の存在
次のような簿外負債を多額に抱えている会社は相手が見つかりにくいと言われています。
訴訟に巻き込まれており、多額の損害賠償金を支払う必要があるかもしれない
◇従業員の退職金要支給額が多額にある
◇他社または他人の債務の連帯保証人になっている
◇労働組合の存在
私の経験上、労働組合が存在する企業は売却が難しいです。
従業員は、M&A後にオーナーが変わったら「解雇されるのではないか」、「給料を下げられるのではないか」といった心配をし始めます。
労働組合にM&A反対活動を開始されると事態の鎮静化に多くの時間と労力を要すため、M&Aの条件詰めどころではなくなります。事態が鎮静化するまで、買収は見送りと結論をだすのが一般的な買い手の心情です。
会社とプライベートが公私混同している
収益不動産を会社が保有している、多額の含み益を抱えた非事業用土地を保有している等、本来であれば個人で所有しているべきものと会社が保有している会社は、相手が見つかり辛いです。
会社分割等の方法によって収益不動産を別会社に保有させる等のスキーム等を利用すれば、売却希望事業に魅力があれば相手が見つかる可能性は一気に高くなります。
まとめ
相手の見つかりやすい会社と見つかりにくい会社の特徴をご紹介させていただきました。
相手も見つかりやすい会社の項目に全て該当する会社は多くありません。
ほとんどの会社が、見つかりやすい項目と見つかりにくい項目の両方に該当ポイントがあります。一つでも多く相手が見つかりやすい会社の項目を増やすことがM&Aによる事業承継を成功させる秘訣です。
M&Aで会社を第三者へ譲渡した経営者に共通することは、経営者が真面目に誠実に会社と向かい合っていることです。
粉飾、公私混同しないという、上場企業であれば当然のことを行い、第三者から見て魅力的に見えるようにすることが一番かと思います(過度な節税はしないほうが良いです)。
愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・スポット対応
・個別コンサルティング業務
◇メール、チャットワーク対応がメインの顧問契約「コスト重視プラン」始めました。
このような方がコスト重視プランの対象です
・毎日忙しく、税理士と面談する時間がない
・直接会って面談するよりも、メールやチャットで気軽に質問できるほうが望ましい
・別に税理士には会わなくていいので安くしてほしい
といった要望にお応えし、コスト重視プランを始めました。
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起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
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