こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
税法上の組織再編(以下では合併に限ります)では、適格と非適格の2種類が存在します。
適格合併と非適格合併、単語だけ並べてみると適格合併のほうが良さそうです。
組織再編税制について少し学んだだけの時は私もそのように思っていました。
適格合併と非適格合併の違いはどこにあるのでしょうか。
この2つの大きな違いは?
まず、この2つの違いについて確認してみます。
適格合併
・被合併法人(簡単にいえば、合併によって吸収され、なくなってしまう法人です)の保有する資産・負債を簿価で引き継ぐ
・一定の要件を満たせば、繰越欠損金を引継ぐことができる
非適格合併
・被合併法人の保有する資産・負債を時価で受入れる
適格合併と非適格合併の大きな違いは、被合併法人の保有する資産・負債を簿価か時価のいずれかで受入れるかの違いです。
繰越欠損金を引継ぐことができる点も非常に大きな違いです。被合併法人が多額に繰越欠損金を有している場合には、使わない手はありません。
適格合併のほうが良い?
これだけをみると、適格合併は繰越欠損金を引継ぐことができるので、メリットが多分にありそうです。
被合併法人の繰越欠損金の有効活用を目的とした合併であれば、適格合併しか選択肢はありません。そうでなければ目的が達成できません。
また、適格合併は被合併法人の資産と負債を簿価で引継ぐので、資産に多額の含み益がある場合は、課税の繰り延べが可能です。
非適格合併のほうがメリットのある場合
一見、適格合併のほうがメリットがありすぎて、非適格合併を選択する余地があるのか?と昔は考えていました。
しかし、非適格合併のほうが有利に働くケースもあります。
例えば次のような事例です。
◇被合併法人に含み損を抱える資産があり、合併前事業年度では営業上利益がでそうな場合。
・非適格合併であれば合併前の事業年度で資産の含み損と営業上の利益を相殺することができます。
・適格合併の場合であっても、合併法人と被合併法人の間に支配関係発生日から5年後の日まで又は組織再編事業年度開始日から3年以内に当該含み損が実現した場合は当該譲渡損の損金算入が制限されます。
◇合併法人に多額の繰越欠損金、被合併法人は少額の繰越欠損金がある場合
・適格合併であっても、被合併法人の繰越欠損金を引継ぐには、一定の要件(みなし共同事業要件)を満たす必要があります。
みなし共同事業要件の詳細は別の機会にご紹介させていただきますが、注意すべきは、適格合併=欠損金を自動的に引継ぐ、というわけではないということです。
適格合併であれば欠損金が引継げる!と思っていると痛い目にあうわけです。
また、繰越欠損金の引継制限は、被合併法人だけではなく、合併法人の保有する繰越欠損金にも利用制限が課せられている点に留意が必要です。
ケースによって詳細な検討が必要ですが、繰越欠損金の利用制限を受ける場合、使えると思っていた親会社の繰越欠損金が使えないという自体を招くこともありうるので留意が必要です(例えば、繰越欠損金を抱えた大企業が、中小企業を買収し、すぐに合併する場合は合併により大企業の繰越欠損金に利用制限が課せられてしまいます)。
この点、非適格合併は被合併法人の欠損金を引継ぐことができませんが、合併法人の欠損金は自由に使うことができます。
まとめ
適格と非適格の2種類だといわれると適格を選びたくなってしまいます。
税法上の言葉の定義がそのようになっているだけで、合併する会社にとって適格合併が必ずしも最良の結果となるわけではありません。
合併は適格・非適格の判定から繰越欠損金の引継、特定資産譲渡等損失、印紙税等検討すべき事項が多岐にわたります。
先入観をもって、適格合併が最適解だと判断せず、様々なスキームパターンを検討することをお勧めいたします。
愛知県名古屋市を中心に活動している池下・覚王山の公認会計士・税理士澤田憲幸です。
中小企業のM&A、事業承継、スタートアップ支援を得意としています。
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