こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
今日の100円と、1年後の100円、どちらが価値があると思いますか?
どっちも100円なんだから、価値は同じ!!
と、考える方が多いのではないでしょうか。
実は今日の100円と1年後の100円では、価値が異なります。
今日はそんなお話をご紹介します。
お金の価値は、時間で変わる
今日の100円と1年後の100円、実は価値が異なります。
世の中には、”金利”というものがあります。
一番身近な金利は銀行の金利です。これを頭の中に思い浮かべていただければわかりやすいです。
金利10%の銀行に1年間お金を預けた場合を考えてみます。
今日の100円は1年後に110円になっているはずです。
【計算式】
100円×10%=10円
100円+10円=110円
金利の力によって、今日の100円が1年後には110円になりました。
お金には時間的な価値があると考えることができます。
将来の100円は現在のいくら?
今日の100円は、1年後の110円でした(金利が10%の場合)。
反対に、1年後の100円は今日のいくらなのでしょうか。
どうように金利が10%だと仮定すると次のように計算できます。
今日の90.9円は金利が10%の世の中では1年後の100円に相当することを意味します。
つまり、今日の90.9円は1年後の100円と同じ価値、今日の100円は1年後の110円と同じ価値を意味しているということです。
将来の価値を現在の価値に修正することを、ファイナンスや管理会計の世界では現在価値に割引き率10%で割り引くと言ったりします。
現在価値・割引率の考え方は投資に活用可能
この現在価値、将来価値、割引率といったややこしい考え方は日常生活では使う場面がない!とお考えになられる方も多いかと思います。
実はこの考え方、投資に使えます。
・1年後に100円欲しい
・今は80円しかない
・どの案件に投資すべきかわからない
将来的に100円欲しいんだけど、今は手元80円しかないというような場合、
100円÷80円=1.25であることから
現在価値・将来価値の考え方を理解しているのであれば、1年間の投資に対するリターンが25%以上を見込める案件に投資しなければいけないとの判断を下すことができます。
【検証】
・80円×25%=20円
・80円+20円=100円
見事に1年後に100円欲しいという投資家さんの要望を叶えることができています。
陥りがちな点
管理会計をかじったことがある方に多いのは、割引率を設定するには資本コストがうにゃうにゃうゃとか、大企業で用いている割引率を教えてくださいとかを気にし始めてドツボにはまるパターンです。
ファイナンス理論では資本コストの考え方は確かに重要ですが、仮に資本コストや大企業で用いている割引率を把握できたとしても、中小企業にそのまま当てはめることはできないですし、そもそもの前提が大きく異なります。
自社に適した割引率を適切に設定することが重要です。
プロジェクト投資の判断に利用するために
投資の判断に現在価値・将来価値の考え方は役に立つと述べさせていただきました。
投資すべき案件が複数ある場合に、どの案件を優先すべきかとう判断にもこの考え方は応用可能です。
次の2つのプロジェクトのうち、銀行融資の関係から1つを選択しなければならない場合はどちらを選択すべきでしょうか。
・初期投下資本:1000万円・投資期間:1年
・期待利益:5%(1年後に50円が得られる)
・投下資本は投資期間満了時に回収
・投資期間:5年
・期待利益:2%(1年後60円、2年後も60円、3年後も60円が得られる)
・投下資本は投資期間満了時に回収
割引率を3%に設定した場合と5%に設定した場合で比べてみます。
プロジェクトAでは割引率が3%の時は正味現在価値が19です(1050÷(1+3%)-1000)。割引率が5%の時はゼロです。
プロジェクトBは割引率が3%の場合も5%のいずれの場合もマイナスになってしまっています。
期待利益率が割引率を上回らない限り投資をすべきでないということです。
期待利益と割引率はどう決める?
期待利益が割引率を上回らない限り投資をすべきではないということはわかりましたが。期待利益と割引率はどのように決定すればよいのでしょうか。
実務上、非常に悩ましいです。
期待利益:過去の類似投資案件から、期待利益を設定します。過去事例がない場合、他社の利益率等から設定します。検討している投資案件からどの程度のリターンを得たいのか、という点が重要です。
割引率:会社としての目標、今期は前期に比べて利益率110%アップ!ということであれば、10%を割引率に設定します。というのも、10%に設定しておかなければ、10%以下の期待利益のものが投資案件として採用されてしまう可能性があるためです。
まとめ
現在価値の考え方は、概念的には簡単です。
実務に導入しようとすると非常に難しい。というのも、実務上投資案件に同じものは2つとなく、全ての案件で内容や前提条件が大きく異なるためです。
とはいえ、投資判断における一定の指針を設けたいというのであれば、「割引率」という最低限クリアすべきハードルと、「期待利益」という目標値を適切に設定することで、投資判断基準を設けることは可能です。
投資案件の判断には、「見積もり要素」が多分に含まれます。投資判断指標を設定するには、「事前」の念入りな検討が必要です。
投資判断指標の設定等にお悩みの方は一度ご相談ください。
【少しだけ相談したい方向けに、スポット相談も実施中です】
創業間もないベンチャー企業やフリーランスの方のサポートに特に力をいれています。
【プロフィール】
・プロフィール
【主な業務内容】
・スタートアップ支援
・事業承継対策
・M&Aサービス
・税務顧問業務
・個別コンサルティング業務
・コスト重視プラン
公認会計士・税理士澤田憲幸に問い合わせしてみる
起業支援、事業承継対策、中小企業のM&Aや組織再編を得意としています。
会社設立直後で税金・会計・財務まで手が回らない経営者の方、今の顧問税理士にご不満のある方、事業承継対策に悩んでいる方、M&Aの話を金融機関等から提案されたが得な話か損する話か判断ができない方は一度ご相談ください。
税務・財務の知識の有無で経営判断は大きく変わってきます。
澤田公認会計士・税理士事務所が貴社のブレインとなって全面的にサポートさせていただきます。