こんにちは。名古屋池下の公認会計士・税理士の澤田です。
経営者の方と話していると、”粗利”に注目している方が非常に多いです。
粗利だけに注目していると、痛い目にあうかもしれません!
”粗利”でいいじゃないか、とお考えの方が多いと思いますが、なぜ痛い目にあうのか、をご説明します。
粗利とは
まず、粗利とは何でしょうか。
粗利とは、”小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)”によると、次のように解説されています。
粗利 あらり gross profit
売上高から材料費や人件費などの売上原価(コスト)を差し引いた利益。
売上から、売上原価を差引いたものが、粗利ということです。
その名称の通り、ざっくりとした利益を世間一般では粗利と呼んでいます。
粗利の何が悪いのか
利益には、粗利の他にも営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益等、様々な種類があります。
簿記を学び始めたときや、財務に十分慣れていない方は、損益計算書の構造を理解していないため、「どの利益に着目して議論すべきか」、をきちんと把握していないケースが多々あります。
粗利(売上総利益)=売上 – 売上原価
という算式で計算されることは、先ほど申し上げた通りです。
売上は企業が商品(モノやサービス)を提供した金額ですから、わかりやすいです。
問題の所在は”売上原価”の定義が企業によって様々である点です。
例:一般的には以下のものを売上原価に含むケースが多いです
小売業にとっての粗利:商品の仕入れ値、製造に要した費用
製造業にとっての粗利:材料費、人件費、減価償却費
ちなみに、製造業であっても、製造原価を計算していない会社もあったりします。
そのため、ひとえに売上原価と言っても企業によって定義がバラバラな点が一番の問題点なのです。
なぜ粗利では意味がないの?
粗利に意味がない理由は、粗利=売上総利益の内容が話者によって異なるためです。
全ての人件費を”販売費及び一般管理費”に計上している企業の経営者と、売上原価にも人件費を計上している企業の経営者では、粗利の意味するところが異なってきます。そのため、双方が粗利について議論しても、しっくりきません。
お互いが意味する”粗利”の意味がずれているためです。双方の粗利の定義がずれていては議論も深まりません、というのが粗利では意味がないという理由の一つです。
粗利の定義について、共通認識があれば、粗利について議論することは十分意義がありますが、そうでないのであれば、営業利益率をベースとする方がより意味があります。
粗利と営業利益の違い
営業利益は、売上から売上原価だけではなく、販売費及び一般管理費もマイナスされます。
粗利(売上総利益):「売上-売上原価」
営業利益:「売上総利益-販売費及び一般管理費」
粗利だけで議論していた場合に齟齬が生じていた、人件費をどの区分に計上するのかという問題等は解決可能です。
営業利益は、家賃や電気代等の水道光熱費の諸経費控除後の利益です。企業の入居しているビル等の立地や諸経費の使い方も会社運営のノウハウの1つです。
営業利益には諸経費が含まれているため、他社との比較という点では微妙かもしれませんが、諸経費の使い方も含めて比較することには十分意義があるのではないでしょうか。
粗利と経常利益の違い
経常利益のことを”ケイツネ”と業界の方は呼んだりしています。
経常利益は、「営業利益-営業外損益」で計算されます。
営業外損益には、受取配当金、受取利息、支払利息等が計上されており、企業の本来の営業活動とは関係ない損益が計上されています。
本来の営業活動とは関係ないとはいえ、支払利息等は企業を運営していく上では必要不可欠なものです。
売上総利益が黒字でも、経常利益レベルで赤字ということは、資金調達コスト等が嵩んでいるという証拠です。
資金調達方法まで考慮したうえでの比較であれば、経常利益ベースで比較することは重要です。
粗利と税引前当期純利益の違い
税引前当期純利益は、経常利益から特別損益を考慮したものになります。
固定資産の売却損益、退職金の支給等が特別損益に計上されるイメージです。税金以外の損益が漏れなく計上されている利益と認識ただければと思います。
粗利に一喜一憂する前に
粗利が黒字であることは非常に重要です。ただ、粗利が黒字なだけでは、意味がありません。その下の段階である、営業利益や経常利益までも含めて判断すべきです。
粗利、粗利と言っていても、販売費及び一般管理費までを加味したら赤字かもしれません。
経営者友達が粗利率が~~と言って、自社よりも悪い粗利率であっても、その経営者友達の意味する粗利率には人件費が含まれているかもしれません。
財務に詳しい人から言わせてみれば、自社の粗利率のほうが悪かった…喜んでいた自分が恥ずかしい!!なんてことが起こりうるわけです。
まずは、自社の財務をしっかりと理解しましょう
経営者の方は公認会計士でもなければ、財務のプロでもありません。
顧問税理士から決算書の数字について説明を受けて、なんとなく”わかった気になった”状態の経営者さんが非常に多いです。
今回の粗利の件でも同様です。売上原価に人件費が入っているのか、入っていないのか、そこまで理解して粗利率、売上総利益率、営業利益率等について自社の財務内容を把握している方はほとんどいない、というのが実情です。
税理士の提供する税務顧問業務には財務コンサルティングが含まれていないのが原因です。税理士の提供する税務顧問はあくまで”税務”についてです。
税務は予防法学です。財務はこれからの企業のあるべき方向性を見据えた指針になりえます。
自社を大きくしようとお考えの経営者様、財務は財務のプロに任せてみてはいかがでしょうか。きっと、ご自身では気が付かなかった、見えていなかった会社の姿がみえてくるはずです。
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